今後の研究が期待される、特徴的な香りの精油
ランタナとは
日本では香料と言うよりも観賞用・園芸用植物として知られているランタナ。和名で“七変化(シチヘンゲ)”と呼ばれているように、同じ茎から違う色の花を咲かせること・咲いてからも徐々に色が変化していくことが特徴とされていますよ。花の色も白・黄色・オレンジ・ピンクなど色とりどりで華やかですね。上記の写真のように小さな花が密生して咲きますがそこでもグラデーションのように色が異なること・開花時期が長いことなどもあり観賞用としても人気があります。世界的にも“Most Beautiful Flowers In The World(世界で最も美しい花)”と称されるほど高く評価されています。
植物としてはクマツヅラ科シチヘンゲ属に分類される常緑小低木で、同じ科の植物にはレモンバーベナがあります。ランタナは熱帯アメリカが原産の植物なので暑さには強いですが、気候が異なる日本では“常緑”ではなく秋~冬頃に落葉します。原産は中南米とされていますが生命力が強く、現在は世界50カ国以上で帰化植物として定着しています。江戸時代末期に渡来したと言われている日本でも、小笠原諸島や沖縄諸島など暖かい地域に分布していることが確認されているそう。特に熱帯・亜熱帯地域での野生化が著しく、各地の生態系を乱したり作物の生長を低下させることから“世界の侵略的外来種ワースト100”にも選定されています。
アメリカ大陸からランタナが広がったのは、17世紀頃にオランダの探検家がヨーロッパに持ち帰ったことがきっかけと言われています。原産地である中南米ではランタナの花を装飾品として利用していたほか湿疹や痒みなど皮膚の問題に対する民間薬として利用していたとも伝えられていますが、ヨーロッパでは主に観賞用として栽培されたそう。様々な色を見せるランタナの花に当時の人々魅了されたのではないでしょうか。ちなみに原産地も同じエリアでヨーロッパに伝えられたのも同時期だったと言わるレモンバーベナは香料としても重宝されましたが、ランタナは独特の香りからか香料原料として使われるようになったのはごく最近です。
ランタナの花の香り自体は甘くパウダリーな香りで、蝶・蜜を食べる鳥などが寄ってくることでも知られています。が、ランタナの花や葉などから採油された精油は、可憐な花のイメージとは違いウッディー系もしくはスパイシー系に分類される個性的な香りです。お花の精油というよりも香辛料が原料と言われた方が納得できるような、独特の香りで少しツンと鼻の奥が刺激されるような印象があります。調香の際もフローラル系だけではなくハーバルもしくはアンバーベースの香りを作るときに使われることが多いそう。ちなみに精油としての歴史が浅いこと・毒性のあるケトン類が含まれていることからアロマテラピーではほとんど使われません。
基本データ
- 通称
- ランタナ(Lantana)
- 別名
- シチヘンゲ(七変化)、コモン・ランタナ(Common lantana)、big-sage、tickberry
- 学名
- Lantana camara
- 科名/種類
- クマツヅラ科シチヘンゲ属/常緑小低木
- 主産地
- マダガスカル、インド、ブラジル、エチオピアなど
- 抽出部位
- 花(葉・小枝を含むものも有)
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- 無色〜淡黄色
- ノート
- トップ~ミドルノート
- 香り度合い
- –
- 代表成分
- タバノン、β-カリオフィレン、サビネン、α-フムレン、δ-カジネンなど
(※産地によって成分・成分比率が大きく変わると言われています) - おすすめ
- 芳香浴・防虫
ウッティーな香りの奥に少しスパイシーさ・刺激を含む、薬草のような香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- リラックスしたい
- 心のバランスが乱れている
【肉体面】
- 風邪・インフルエンザ予防に
- 咳や気管支炎の軽減に
- 虫除け・防虫剤として
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ランタナに期待される効果・効能
心への作用
メンタル面のサポートとして用いられることはほとんどありませんが、ランタナのウッディーかるスパイシーな香りは心に安心感を与えて精神安定をサポートしてくれるのではないかと考えられています。成分的にもβ-カリオフィレンやα-ピネンなど神経をリラックスさせる働きが期待されているものが含まれていますので、ランタナの香りが好きな方であればリラックスタイムの演出を手助けしてくれる可能性もあるかも知れません。ただし主成分であるタバノン(Tabanone)はケトン類に分類される芳香成分で多量・長期間の使用は神経毒性を持つ危険性がありますので、デイリーな使用は避けたほうが良いでしょう。
体への作用
アロマテラピーではほとんど用いられることがないランタナ精油ですが、近年は優れた抗菌作用や抗炎症・抗アレルギー作用を持つ可能性が報告されたことから一部で注目されています。そのほか伝統医学的利用も合わせて風邪やインフルエンザの予防や呼吸器炎症のケアに良い・リンパ強壮作用や静脈強壮作用がある・ケトン類が肝臓を刺激することからダイエットに役立つなどの説もあります。
また2015年の『Journal of Scientific and Research Publications』に掲載された研究論文ではサルモネラ菌や大腸菌に対する有効性が、2011年の『Journal of Ethnopharmacology』掲載のラットを使った実験では抗腫瘍作用・抗発癌性を持つ可能性も示唆されています。使用の歴史が浅くまだ研究が不十分なこと・ケトン類などによる毒性の問題があることもあり利用の段階には至っていないようですが、今後の研究に期待されているハーブ・エッセンシャルオイルの一つとも称されています。
その他作用
皮膚利用について
ランタナは抗菌作用が高いことが報告されていること、抗炎症作用や瘢痕形成作用が期待できることから一部の国では虫刺されや傷のケアなどに利用されることがあるようです。日本でもそういった働きが紹介されることがありますが、皮膚刺激性が指摘される成分を含んでいること・肌に対する影響もハッキリとは分かってないことから、自己判断で利用は避けることをお勧めします。
虫除け・防虫剤として
ランタナの精油が持つ効果として最も信憑性が高いのは、防虫作用があるという点かもしれません。2010年にインドで行われた実験ではLantana camaraのエッセンシャルオイルに殺虫活性があり、特に蚊に対して有効であることが報告されています。この研究報告では合成殺虫剤の補助に役立つ可能性も示唆されており、マラリア予防などに対しても役立つのではないかと考えられているそう。ケトン類含有量の問題もありますから自分の肌・衣服に対する虫除けスプレーとしての使用はおすすめできませんが、お部屋の窓枠・ドア枠周りなどの蚊よけとして役立つ可能性はあるでしょう。
ランタナの利用について
相性の良い香り
スパイス系の精油とブレンドしやすい香りです。似た印象のあるハーブ系・ハーバル調寄りのフローラル系の香りとも組み合わせやすいでしょう。
【ランタナのブレンド例】
ランタナ精油の注意点
- ケトン類を含むため妊娠中・授乳中の方、お子さん、てんかんなどの疾患のある方は利用を避けましょう。
- 高濃度・長時間の使用は避けましょう。
- ランタナ精油は使用データが少なく、副作用などについても判明していない部分が多くあると考えられます。禁忌とされていなくとも濃度・頻度などに注意して使用するようにしましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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