ヘムロックスプルース(ツガ)とは
日本ではマニアック寄りのスプルース系の精油ですが、比較的よく見かける精油としては近年アトピー性皮膚炎などの皮膚炎症抑制・甲状腺機能への働きかけなどが期待されるブラックスプルース(黒唐檜)と、このヘムロックスプルースの2つが挙げられるでしょう。加えてホワイトスプルース/カナダトウヒ(Picea glauca)を加えた三種が流通の大半を占めています。
ヘムロックスプルースも他2つと同じく北アメリカが原産の針葉樹で、見た目はクリスマスツリー(モミの木)によく似ています。本来“スプルース(spruce)”というのはマツ科トウヒ(Picea)属を表す言葉ですが、実はヘムロックスプルースはマツ科ツガ(Tsuga)属に分類されています。そのためか単に“ツガ精油”もしくは“カナディアン・ツガ”と呼ばれることもあります。ツガの方が日本人としては親しみもありますね。
北アメリカのネイティブアメリカンの人々はブラックスプルースを宗教儀式や傷・筋肉の痛み緩和に使われていたと言われています。対してヘムロックスプルースは風邪をひいた時に加熱してスチームバスを作り呼吸器系の不調に使った・内部樹皮をお茶にして発汗解熱剤のような感覚で飲んでいたと伝えられています。
ブラックスプルース(黒唐檜)が爽やかさ・静かな森などの印象を与えるのに対し、ヘムロックスプルースは明るく開放的な森・クリスマスなどの楽しいイメージを連想させるとも言われています。単に香りを比較した場合でもブラックスプルースは濃密でリアルな森の香りですが、ヘムロックスプルースはフルーティーさや爽やかさが強いことが特徴。親しみやすく、好き嫌いがさほど激しくない香りであると言えるでしょう。
日本では一部の方が取り入れている程度ですが、アメリカでは甘さと爽やかさのバランスが良いこと・殺菌効果があることから、ルームスプレーや洗剤・石鹸などのバス用品に配合されていることも多いようです。原産地であるアメリカやカナダでは精油の利用も多いようですし、木材としても加工がしやすく汎用性が高ことから広く使われています。近縁種にはウェスタンヘムロック(米ツガ Tsuga heterophylla)がありますが精油成分にはかなり差があり、どちらかと言うとマツ科トガサワラ属のダグラスファー(米松 Pseudotsuga menziesii)に近いと言われています。
基本データ
- 通称
- ヘムロック・スプルース(Hemlock Spruce)
- 別名
- カナダツガ、カナディアンヘムロック(Canadian Hemlock)、コモン・ヘムロック(Common Hemlock)、アマバラスファー
- 学名
- Tsuga canadensis
- 科名/種類
- マツ科ツガ属/常緑針葉樹
- 主産地
- カナダ、アメリカ
- 抽出部位
- 葉、小枝
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- ほぼ無色~淡黄色
- ノート
- ベース~ミドルノート
- 香り度合い
- やや強め
- 代表成分
- 酢酸ボルニル、α-ピネン、カンフェン、リモネン、トリシクレン、ミルセン
- おすすめ
- 芳香浴、マッサージ(※ごく少量で)
フルーティーな甘さとバルサミック感のある、明るい森の香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- ストレス・神経疲労
- 緊張・イライラ・憂鬱
- 情緒不安定さを感じる
- 不安が頭を離れない時
- 閉塞感や鬱屈感がある
- 明るい気持ちになりたい
- ゆったりしたい時
【肉体面】
- 血行不良・冷え性
- 筋肉痛・筋肉の強張り
- 疲労・慢性疲労の軽減
- 関節痛・リウマチ緩和
- 風邪・インフルエンザ予防
- 気管支炎や喘息の緩和に
- 呼吸機能の強壮に
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ヘムロックスプルース(ツガ)に期待される効果・効能
心への作用
ヘムロックスプルースの精油には様々な芳香成分が含まれていますが、最も多く含まれているのは“松葉”の香り成分でもある酢酸ボルニル(ボルニルアセテート)です。ややクセがあるので人によっては好みは分かれますが、酢酸ボルニルは低用量で使用した場合に自律神経系を弛緩させる働きがあることが報告されています。次いで含有率が高いのが森林浴効果や強壮などに役立つとされるα-ピネンで、この2つの成分含有率はブラックスプリュースよりも高い傾向にあります。
酢酸ボルニルが自律神経の緊張を解してくれること、α-ピネンが体全体を強壮しつつ気分をリフレッシュさせてくれることから精神状態を安定させる作用があると考えられています。さほど量は多くありませんが鎮静作用のあるリモネンなども含まれていますから、相乗して神経系や気持ちのバランスを整える働きが期待できるでしょう。ストレスなどで気分が憂鬱になっている時や不安が頭から離れない・イライラする時などに役立つ精油とされています。また心を落ち着ける働きと心を開放させる働きがあるとして、瞑想やグラウンディングワークなどスピリチュアルな面でも取り入れられているようです。
体への作用
α-ピネンなどモノテルペン炭化水素類の働きで血行促進効果が期待できること・心拍を整える働きが期待される酢酸ボルニルを含むことなどから、ヘムロックスプルースは冷え性や循環不全の改善に役立つと考えられています。α-ピネンには体を整える働きもありますから疲労・慢性疲労の改善にも効果が期待でいるでしょう。
加えて抗菌・抗ウィルス作用や抗炎症作用があるとされるカンフェンを含んでいますから、相乗して筋肉痛や関節痛・リウマチによるの痛みの緩和、風邪やインフルエンザの予防・回復促進にも取り入れられています。
ネイティブアメリカンは古くから風邪や咳・気管支炎・喘息などの呼吸器系の不調改善に利用していたと伝えられていますし、現在でも去痰・鎮咳・鎮痙作用がある精油として呼吸器トラブル全般に有効とされています。体液循環を整える働きや抗炎症作用が期待できるため、花粉症やアレルギー性鼻炎などのアレルギー緩和にも効果が期待されています。
その他作用
空気浄化剤として
ヘムロックスプルースは抗菌・抗ウィルス作用があるのでデュフューザーなどで拡散すると直接的に空気をキレイにしてくれると考えられます。また香りを嗅ぐことで体、特に呼吸器の強壮にも役立ってくれるでしょう。ルームフレグランス感覚で利用すると風邪やインフルエンザなどの感染症予防効果も期待できます。血液・体液の循環を整える働きも期待できますし、清潔感と暖かさのある森の香りですから、特に冷えやインフルエンザの流行などが気になる冬場におすすめです。
ヘムロックスプルース(ツガ)の利用について
相性の良い香り
あまり相手を選ばない香りですが、同系統のウッディー系や樹脂系とブレンとしやすいです。爽やかさのあるハーブ・フローラル系とも合うでしょう。
【ヘムロックスプルースのブレンド例】
- 情緒不安定な時に⇒ラベンダー、ガルバナム、シダーウッド
- 呼吸器トラブルに⇒ラバンジン、オークモス、マートル
- 血行不良の改善に⇒ベンゾイン、ローズマリー、パイン
- 空気浄化用に⇒ホーリーフ、リナローウッド、ロザリーナ
ヘムロックスプルース精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の女性、乳幼児への使用は避けましょう。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
- 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。