ヒンヤリ感が話題の、親しみある日本ミント
和ハッカ/コーンミントとは
日本のハーブの一つである薄荷(ハッカ)。ハッカという言葉はハッカ属全体の総称としても利用されていますが、日本で「ハッカ」もしくはハッカ油と呼ぶ場合は和ハッカを指すのが一般的です。あまりハーブやアロマなどに興味が無くても「ハッカの香り」というと思い浮かぶ方が多いと思いますし、ハッカ飴をはじめとした昔ながらのお菓子類やお祭りなどを思い出して懐かしい気持ちになる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ミントと呼ばれる植物は100種類以上あると言われていますが、和ハッカはペパーミント、スペアミントと並んで“3大ミント”と呼ばれるほどメジャーな存在。エッセンシャルオイルもこの3つにベルガモットミントを加えた四種がミント系精油として流通しています。
ちなみに和ハッカはかつてヨウシュハッカ(Mentha arvensis)の変種としてMentha arvensis subsp. piperascensという学名が一般的でしたが、現在は別種として扱うMentha canadensisという学名を使うのが主流のようです。国外では和ハッカのことを主にJapanese peppermint(和種薄荷)と呼んでおり、コーンミントという呼び名はヨウシュハッカを示す時に利用される言葉と区分されているようですが、日本国内では現在も精油の表記としては学名・別名ともにヨウシュハッカの一種という扱いが多いようです。
和ハッカは中国から東南アジアが原産で、日本には今から2000年以上前には中国から伝わったと考えられています。平安時代には食材とされていたそうですが、室町頃になると生薬として扱われることが増え小規模な栽培も行われていたとする説もあります。ただし本格的な栽培は1800年台の半ばに岡山県で行われたのが初とされており、その後新潟や山形へと北上・北海道でもハッカ栽培が行われるようになります。
この栽培の本格化や全国的な広がりは水蒸気蒸留の技術が本格的に導入されて、精油を作ることが出来るようになったためなのだとか。ハッカ油は日本の貴重な輸出品の一つとして、最盛期は世界生産量の70%を占めたほど全国的に栽培が盛んになります。しかし戦争に伴う国の統制・戦後にはアジア圏で安価なハッカが生産されたことや合成ハッカの登場などの影響から、生産は衰退し現在は北海道の一部地域で国内生産の大半を生産されています。
和ハッカの特徴としてはミント類の中でもl-メントール含有量が多いことで、ペパーミントと比較した場合最大で1.5倍程度程度になると言われています。そのため「クールミント」という別名が付けられるほどハッカ系の精油の中でも特に清涼感が強く、またメントールに起因するリフレッシュ効果や冷感作用なども高いと考えられています。2010年頃からハッカ油の使い方・活用方法が取り上げられる機会が増えたことで、その万能性が注目されています。また原料から国産の「和アロマ」が人気を集めるようになり、需要は高まっている存在と言えるでしょう。
基本データ
- 通称
- 和ハッカ(和種薄荷)
- 別名
- 日本薄荷、ジャパニーズペパーミント(Japanese peppermint)、クールミント(Cool Mint)、コーンミント(Corn mint)
- 学名
- Mentha arvensis(Mentha canadensis)
- 科名/種類
- シソ科ハッカ属/多年草
- 主産地
- 日本(主に北海道)、インド、ネパール、中国
- 抽出部位
- 全草
- 抽出方法
- 水蒸気蒸留法
- 色
- ほぼ無色~淡い黄色
- ノート
- トップノート
- 香り度合い
- 強い
- 代表成分
- l-メントール、l-メントン、イソメントン、ネオメントン、酢酸メンチル、リモネン、1,8-シネオール
- おすすめ
- 芳香浴・入浴・マッサージ・スキンケア・ヘアケア
ペパーミントよりも甘みがなく、スッキリとした清涼感あふれる香り
こんなお悩みにオススメ
【精神面】
- 気分をシャッキリさせたい
- 眠気覚まし・集中力アップ
- リフレッシュしたい時に
- 疲労・情緒不安定な時に
- ストレス対策として
- イライラ・ショック時に
- 気持ちを前向きにしたい
【肉体面】
- 消化不良・胃もたれ
- 胸焼け・吐き気
- 二日酔い・乗り物酔い緩和
- 筋肉痛や肩こりの緩和に
- 喉や鼻の不調に
- 風邪・インフルエンザ予防
- ニキビや痒みのケアに
- 体臭予防・暑さ対策に
- 抗菌・虫よけ剤代わりに
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和ハッカ/コーンミントに期待される効果・効能
心への作用
和ハッカの香りは極めてシャープでキリリとした印象があります。人によっては清涼感が強すぎると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、この香りは気付け薬のような形でも働くと考えられています。眠気覚ましなどにも役立ってくれますし、脳を活性化させて集中力を向上させるという説もありますので仕事・勉強中にもうってつけの香りと言えますね。
またメントールというとリフレッシュという印象が強いですが、神経・精神への鎮静作用があるとされ精神安定に役立つと言われています。そのため和ハッカの香りもイライラやショックなどを和らげる働き・ストレスや疲労などで落ち込んだ気分をリフレッシュして気持ちを前向きにする両方の働きが期待でき、心のバランスを整えるのに役立つと考えられます。
体への作用
メントールは胃腸の働きをサポートする成分として医薬品などにも利用されており、消化不良・胸焼け・吐き気などの軽減をはじめ、二日酔いや乗り物酔いの気分の悪さ緩和にも役立つ言われています。和ハッカにはメントール以外に胃腸サポート効果があるとされるリモネンなども含まれていますから、相乗して消化器系の不調改善効果が期待できます。
そのほかに鎮痙・鎮痛作用があることから筋肉痛や肩こり・腰痛・神経痛などの緩和にも利用されています。またメントールは抗菌・抗真菌作用や血管収斂作用があるため、風邪やインフルエンザの予防やケア・呼吸器系の不調緩和にも効果が期待できると言われています。スースーとした香りですから花粉症などで鼻詰まりが起きて頭がぼんやりしている時などにも役立ってくれます。ただし過剰に摂取・吸引すると呼吸器や胃の粘膜を傷つける可能性も示唆されていますから、高濃度で長時間利用するのは控えた方が良いでしょう。
その他作用
スキンケア・体臭予防に
和ハッカは殺菌・抗炎症作用や痒みを抑える働きに優れているとされています。石鹸・ジャンプーなどに利用されているのも爽やかさを出すだけではなく、肌を清潔に保つ働きを兼ねているのだとか。そのためニキビや毛穴の黒ずみ・角栓などのケアに適していると考えられていますし、抗真菌作用もあることから水虫・爪水虫(白癬)をはじめ、マラセチア菌と皮脂が反応して起こる脂漏性皮膚炎のケアなどにも効果が期待されています。
加えてメントールには消臭作用もありますから、ローションなどに0.5%以下くらいの濃度で加えておくとニキビ予防と体臭予防を同時に行うことが出来ます。刺激性がありますので、パッチテストをした後はボディ用から利用を始めると良いでしょう。
暑さ対策・入浴剤として
近年夏になるとミント系を使った暑さ対策グッズが多く流通していますし、薬局の片隅などで売られていた“ハッカ油”も大々的に注目を集める商品となりました。冷涼感ある香りも勿論ですが、メントールには「冷感作用」と呼ばれる冷感受容体というタンパク質を刺激する働きがあるため、皮膚につくと冷たく感じるというのも大きなメリットとなっていますね。
メントールの冷感作用は実際に体を冷やしているわけではなく、いわば脳を騙しているような状態です。そのためオフィス内での冷えが気になる方なども安心して利用することが出来ますし、入浴剤として利用するとお風呂上がりは涼しく爽快なのにしっかりと体が温まるという優れもの。この入浴剤はミント風呂とも呼ばれているようにペパーミントなどでも同じことが出来ますが、入手しやすさ・原料から国産のものが多いことなどもあり“ハッカ油”を使う方が多いようです。
抗菌・消臭・虫よけ剤として
ニキビや体臭予防だけではなく、メントールはお部屋の抗菌・消臭用としても活用することが出来ます。和ハッカ精油やハッカ油を希釈すると抗菌酢ブレーを自作することで出来ますし、清涼系の香りが好きな方であればレモンなどを加えることでフレグランスと兼任としても使えます。
メントールには昆虫忌避性もあり、ミント類でも最も高いメントール含有量を持つ和ハッカは虫除けにも利用されています。蚊などをはじめゴキブリ避けとしても高い効果が期待されており、台所やゴミ箱など虫が集まりやすいところやゴキブリが潜みそうな棚下・隙間などにスプレーしている方も多いそう。ただしハッカ油を使う場合は「ポリスチレン(PS)」を溶かす性質があるので、かけるものの材質を確認してから利用してください。
和ハッカ/コーンミントの利用について
相性の良い香り
柑橘系とブレンドしやすい香りです。ハーブ系・樹木系でも印象の似ているサッパリ系の香りであれば比較的組み合わせやすいでしょう。
【和ハッカのブレンド例】
- ストレス緩和・不眠対策に⇒ベルガモット、スパイクナード
- リフレッシュ・集中力向上⇒ペパーミント、ローズマリー
- 消化器系の不調緩和に⇒グレープフルーツ、オレンジ、柚子
- 空気浄化用に⇒レモン、ライム、ラベンダー、レモンユーカリ
和ハッカ/コーンミント精油の注意点
- 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんは使用できません。
- 皮膚への刺激が強いため使用量に注意し、敏感肌の方は事前にパッチテストを行いましょう。目の周りへの使用は避けてください。
- アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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