【アロマ】イリス(オリスルート)精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】イリス(オリスルート)精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

複雑なのに柔らかい、稀少な高級香料

精油ショップでもなかなかお見かけしないイリスの精油。フローラルやパウダリーと称されるどこか女性らしい香りが特徴的ですが、精油はオリスルートと呼ばれる芳香を持つアヤメ類の“根”から抽出されています。芳香が生まれるには数年間の乾燥・熟成期間が必要なこともあり、稀少かつ高価な存在となっているんですね。香りを楽しむための存在ですが、リラックスやスキンケアに役立つのではないかという説もありますよ。

イリス/アイリス(Iris)

イリス/オリスルートとは

イリス(オリスルート)の特徴・歴史

フローラル感とバルサミック感が入り混じったような、既に完成された香水のように複雑で相反する香りを持つイリスの精油。個人的には貴婦人とか女王など高貴な女性を連想する香りだったりします。香りが強いため希釈濃度によっては「ウッ…」となる場合もありますが、適度な濃度であれば単体でも超高級石鹸もしくは香水と言った風情。香りはバイオレット(スミレ)に近く、バイオレット精油は葉を原料にしたグリーン系の香りなため「スミレの香り」を作りたい時にもイリス精油が使われていいます。優美で複雑な香りはもちろんのこと、揮発性が低く香りの持続時間が長い=保留剤としても役立つ・時間経過とともにパウダリーな香りに変化していくことも、香水や香料として高く評価される所以だとか。

そんな独特で複雑な芳香を持つイリス精油はアヤメ科アヤメ属の植物が原料。ちなみにイリス(Iris)というのはアヤメ属の属名がそのまま使われた呼び名ですから、広義では日本で自生しているアヤメやカキツバタなども含まれています。読み方の違いでアイリスと呼ばれるのも同様ですが、オリスもしくはオリス・オリスルート(Orris Root)という呼び方をされる場合は話が別。根を意味する“Root”が付けられているように、オリスルートという呼び方をする場合は「根部に強い芳香を持ついくつかの種(の根)」を指すことが多くなっています。パウダリーもしくはフローラルと表現したい香りですが、香料は根から抽出されているんですね。

アヤメ属の植物は世界に150種類程あるものの、主に香料用として用いられているのはニオイアヤメ(Iris florentina)、シボリイリス(Iris pallida)、ムラサキイリス(Iris germanica)の3種類だけ。特に特産地であるイタリアのトスカーナ州(フィレンツェ)産の最高級品は「金塊の3倍の価値がある」なんで称されることもあるそうです。種類については諸説ありますが、オリスルートは古代ギリシアやローマの時代から香料として珍重されていたと伝えられる歴史ある香料の一つでもあります。また、中世頃には咳や気管支炎・下痢などに対しての薬として乾燥させたオリスルートを煎じたお茶が使われていたため、修道院の薬草園でも育てられていたそう。16世紀にフィレンツェで生まれたカトリーヌ・ド・メディシスもオリスルートの香りを好んだという逸話がありますから、香料としても人気の存在であり続けたのでしょう。

ところで、イリス(オリスルート)の稀少で高価な精油です。その理由として挙げられるのがイリスの根を収穫するまでに2~3年、収穫した根の皮を向いて2~3年の間乾燥・熟成させる必要があるということ。実は収穫したての根にはフローラルな芳香はなく、ほぼ無臭もしくは土臭いのだとか。熟成によって“イロン(Irone/アイロンとも)”やイオノン(Ionon/ヨノンとも)という香気成分が形成されると、これを粉砕し、水蒸気蒸留を行います。オリスルートを蒸留するとできるのが、イリスコンクリートやオリスバターと呼ばれるバターやワックスのような粘土の高い半固形物体。通常の精油とは異なるため、オリスバター抽出用にカスタマイズされた蒸留器が必要になります。ものすごく手間と時間がかかっていますよね。さらに「1トンのオリスルートから採れる精油(オリスバター)は2キロ」なんて声もあるくらいに採油率も低め。

このためイリスの精油は稀少でありお値段も相応、最高級品であれば1kg1,000万円とも言われるほど高価な精油となっています。ちなみにオリスバターのままで固形で使いにくいため、精油メーカーからはそれを10~15%に希釈したものが販売されていることが多いようです。そのほか溶剤抽出もしくは二酸化炭素抽出によって作られたイリス・アブソリュートも海外サイトでは販売されています。精油の概念にピッタリ合致するとはいえないイレギュラーさや稀少さもあってか、アロマテラピーでイリスが使用されることはほぼありません。健康メリット云々よりも優雅な香りを楽しむための存在と言えるでしょう。

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香料原料データ

通称
イリス(Iris)
別名
アイリス、オリスルート(Orris Root)、オリス・バター(Orris Butter)、菖蒲(アヤメ)など
学名
Iris pallida(ニオイアヤメ)
Iris florentina(シボリイリス)
Iris germanica(ムラサキイリス)
科名/種類
アヤメ科アヤメ属/多年草
主産地
イタリア、フランス、モロッコ、中国など
抽出部位
根部
抽出方法
水蒸気蒸留法
ほぼ無色~淡い黄色
ノート
ベース~ミドルノート
粘性
高い
香り度合い
強い
精油成分
γ-イロン、α-イロン、イオノン、ミリスチン酸、ラウリン酸
おすすめ
芳香浴・アロマバス (スキンケア・ヘアケア)

スミレに似た印象だが、より温かさと力強さを感じられる香り

イリス(オリスルート)に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

イリス精油やオリスルート・アブソリュートは「香りを楽しむためのもの」として使われるのが一般的。乾燥オリスルートを粉末化したものは伝統医療の中で生薬として使われることもあり若干の研究が行われているようですが、蒸留しイリスオイルとして販売されているもの・その芳香についての研究はほとんどなく、作用や効果については信憑性が低い伝統医学もしくは自然療法上のものであるという見解もあります。

このため作用秩序や有効性は不明ではありますが、ハーブ療法やアロマテラピーにおいてイリス精油の芳香は鎮静作用があり気持ちをリラックスさせてくれると考えられています。香りとしてもイリスは柔らかく上品なフローラル系、かつどこか土や木々を思わせる温かみのある印象。リラックスや幸福感に繋がるような雰囲気の香りではあります。ストレスで情緒不安定になっている時やネガティブな思いから抜け出せない時に、自分へのご褒美として香らせると明るさを取り戻す手助けをしてくれそうですね。

肉体面への作用と効果

イリスは香りを楽しむことが主体の精油のため、不調の軽減や心身のケアを意識して使用されることはほどありません。しかしオリスルートが伝統医学に用いられることから、その効能とされている呼吸器系のケア・痛みや炎症の軽減に役立つのではないかという方もいらっしゃいます。蒸気にして吸引しやすいことから喘息や気管支炎の緩和に良いとする説もありますが、イリスの代表成分であるイオンやイオノンはケトン類に分類されるため毒性や刺激・感作作用を危惧する声もあります。有益性については不明瞭な部分が多く、長時間の継続使用は避けたほうが無難な精油でもありますから、香りを楽しむ目的でのみ使用することをお勧めします。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

オリスルート(乾燥粉末)や抽出物・イリスの精油は美容効果が高いと考えられ、欧米では化粧品類やヘアケア製品に配合されていることもあります。殺菌作用や肌が水分と弾力性を保持するのを助ける働きを持つと考えられているほか、2010年にはカネボウ化粧品から“アイリス精油には抗酸化作用とメラニン色素の生成を抑える美白作用が見られた”という発表もなされています。そのほか抗炎症作用が期待できる・皮膚軟化作用があるなどの説もあり、ニキビなどの皮膚トラブル予防からシミ対策・お肌のエイジングケアなど様々なメリットが紹介されています。

ただしイリス精油は皮膚刺激性が指摘されている精油でもあるため、敏感肌の方・体質と合わない方の場合は逆に炎症誘発物質となってしまう危険もあります。希釈しているもの・オイル化する過程で溶剤を使用しているものは特に注意が必要です。イリス精油自体が稀少で入手しにくい存在でもありますから、手作り石鹸やバスボム作りの際にごく少量を香料として扱うくらいが無難なように思います。スキンケアに使用した場合はイリス(オリスルート)抽出成分を配合の商品を購入したほうが確実でしょう。

イリス精油が利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・緊張
  • 不安・焦燥感
  • 精神的な疲労感に
  • 気分が落ち込んでいる時に
  • リラックスしたい時に

【肉体面】

  • 咳や軽い痛みの軽減に
  • (乾燥・ゴワゴワ肌に)
  • (ニキビ予防として)
  • (美白・シミ予防に)
  • (肌のアンチエイジングに)

イリス(オリスルート)の利用と注意点について

相性の良い香り

オリスの精油は刺激性の問題から低濃度に希釈し他のオイルと一緒に使用することが推奨されている存在です。単体でも素晴らしい香りがありますが、安全性や価格面などを考えるとブレンドに使うのが最適と言えるかもしれません。相性が良いのは柑橘系やフローラル系、またフローラル感やパウダリー感が強すぎると感じる場合はウッディー系の香りと組み合わせると軽やかになります。

イリスのブレンド例

イリス精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • アレルギーのある方は使用に注意が必要です。
  • 持病・疾患のある方、医薬品を服用している方は医師に相談することをお勧めします。
  • 皮膚刺激性があるため敏感肌の方は注意が必要です。
  • 多量・高濃度での使用は頭痛や吐き気などを起こす可能性があります。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元