【アロマ】コモンタイム精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】コモンタイム精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

抗菌性が注目、使用には注意が必要

調理用スパイスから芳香剤まで様々なところで目にするハーブの一つ、タイム。精油は植物そのものよりも濃厚なハーバル調の香りがあります。チモールやカルバクロールなどのフェノール類含有率が高いことから刺激性が高くやや扱いの難しい精油にカテゴライズされていますが、優れた抗菌・抗真菌作用を持つことからインフルエンザ予防や呼吸器ケアとして注目されています。トニック的な効果も期待されている製油です。

タイム(thyme)

コモンタイムとは

コモンタイムの特徴・歴史

肉・動物性食品と相性の良い料理用ハーブとしてもお馴染みのタイム。ハーブティーや抗菌作用と香りを活かしてサシェなどにも使われていますし、消臭剤・芳香剤・入浴剤などの“香り”としても馴染みのあるハーブですね。広義でタイムという言葉はシソ科のイブキジャコウソウ属(Thymus)に分類される植物全般を指す言葉ですが、この条件にあてはまるものは約350種。原産地もヨーロッパ・アジア・北アフリカと広く、観賞用・園芸品種など様々な品種が存在しているハーブと言えます。しかし狭義でのタイム、単に「タイム」と言った場合には和名をタチジャコウソウという種(T.vulgaris)を指すのが一般的です。タチジャコウソウは英名でもコモンタイムと一般や普通を意味する“Common”が付けられているように、料理用ハーブとして最もよく使われているのもこの種となっています。

今では日本でも洋風やエスニック料理などに使われているタイムですが、実は薬草として人々が利用してきた歴史が最も古いハーブの一つに数えられている植物でもあります。代エジプト文明ではミイラを作る時の防腐剤として利用していたと考えられていますし、古代ギリシア人は宗教儀式や入浴時の香りとタイムを使っていたという説もあります。諸説ありますが、学名(属名)や呼び名として使われているThymusという言葉も、ギリシア語で香らせるもしくは燻蒸する事を意味する“thymos”もしくは“thurmo”が語源ではないかと言われていますよ。古代ギリシア人がタイムを神殿で焚いていたのは宗教的な理由だけではなく、抗菌作用や呼吸を助けるという薬効に注目したのではないかという説もあります。西洋医学の父と称されるヒポクラテスも、タイムを呼吸器疾患の治療に推奨していたと伝えられていますよ。

もちろんより象徴的な部分でもタイムは重要視され、古代ローマでは「勇気の象徴」「勇気と強さを刺激するハーブ」として兵士が利用していたことも分かっています。後の中世イギリスでも女性は騎士にタイムを刺繍したスカーフを渡すのが定番だったそうですよ。内気や弱気を克服するためにタイムを入れたスープやタイムティーを飲むという風習もヨーロッパにはあったそうですし、占星術師でありハーバリストでもあるニコラス・カルペパーはタイムを「悪夢を防ぐハーブ」として扱いました。中世から近世の間、タイムは神経障害や呼吸器感染症の治癒、ペスト予防など様々な所で活用されていたハーブだったと言えますね。現在でも伝統的な使用のイメージ・優れた抗菌性を持つとの報告があることから石鹸の成分や抗菌最感覚でタイムは使われています。日本人にとってのヨモギに近い感覚なのかもしれません。

ちなみに、香料もしくは精油の名称としても単に「タイム」と呼ぶ場合はコモンタイム(T.vulgaris)を原料とするものを指すのが一般的です。しかし、精油の「タイム」の場合は植物としての区分だけではなく含有成分から更に細かく区分しています。これは同種でありながら成分の異なる“ケモタイプ”がタイムには存在しており、精油成分や含有比率に大きな差があるため同じコモンタイムが原料であっても別物のような精油が抽出されるため。コモンタイムは一般的なタイムという意味ですが、精油でコモンタイムもしくはホワイトタイムと呼ばれるものはチモール含有率が高いため、精油の流通と使用については刺激成分の少ないタイム・リナロールの方が一般的と言えます。

タイム精油の種類について

タイム系統の精油は一般にあまり流通していないものも含めると約10種類と多くの種類がありますが、コモンタイム(Thymus vulgaris)を原料とした精油類、同属別種の植物を原料とした精油(レモンタイムタイムマストキナなど)に大別できます。このうちコモンタイム(Thymus vulgaris)が原料ではあるものの、ホワイトタイムとは含有成分が大きく異なる“ケモタイプ精油”としては下記の五種類が代表的です。

(※タイム・カルバクロールを入れて6種類とする説も有)。

それぞれ呼び名として使われている成分含有が高いことが特徴で、精油成分の含有成分もしくは含有比率が異なるため香りにも違いがあります。一般的なタイムという意味を持つコモンタイム(ホワイトタイム)ですが、精油としては刺激が強い・毒性が指摘されているチモール・カルバクロールなどのフェノール類を含むことから使用には注意が必要な存在です。同じくチモール・カルバクロール・パラシメンタイプも皮膚刺激性・肝毒性があるので取扱が難しい精油です。特別な目的や理由がない限り、フェノール含有率が低く流通量も多いタイム・リナロールもしくはゲラニオールタイプを選んだほうが良いでしょう。

また、コモンタイムの精油は製法によりレッドタイム、ホワイトタイムの2つに更に分かれています。レッドタイムはコモンタイムをそもまま蒸留(抽出)したもので一般向けにはあまり流通していませんが、刺激性・毒性のある成分量が多い精油です。ホワイトタイムはレッドタイムを再蒸留して作られた精油で、フェノール類の含有が低下することで刺激性や毒性が減少しているのでレッドタイムよりは使いやすいと言われています。ただし製法ではなくフェノール類の多いタイム精油をレッドタイム・フェノール類の少ないものをホワイトタイムと区分しているメーカーもあり、同じ呼び名でも違う精油を指している場合もあります。そうした精油は学名もThymus vulgarisとしか表記されていないことが多いので、不安がある場合は販売員に原料や含有成分・禁忌事項などを問い合わせるようにすると確実です。

香料原料データ

通称
コモンタイム(Common Thyme)
別名
ホワイトタイム(White Thyme)、立麝香草(タチジャコウソウ)
学名
Thymus vulgaris
科名/種類
シソ科イブキジャコウソウ属/小低木
主産地
フランス、スペイン、モロッコ、イギリスなど
抽出部位
葉、開花した花の先端
抽出方法
水蒸気蒸留法(レッドタイムを再蒸留)
ホワイトタイム:無色~淡い黄色
(レッドタイムはオレンジ~赤茶色)
ノート
トップノート~ミドルノート
香り度合い
強め
精油成分
チモール、p-サイメン、y-テルピネン、リナロール、カルバクロール、ボルネオール、カンフェン、α-ピネンなど
おすすめ
芳香浴・ハウスキーピング
(※低濃度ならアロマバス・マッサージも)

微かに甘さを含む、鼻をつくような重厚なハーブの香り

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コモンタイム(ホワイトタイム)に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

コモンタイムの精油はフレッシュハーブとしてイメージするタイムよりも濃厚な香りで、人によっては薬品臭い・鼻にツンと刺さるようなと表現される事もあります。コモンタイムの代表成分でありスパイシーさを含んだハーバル調の芳香成分であるチモール(Thymol)には、神経の強壮作用や脳細胞を活性化する働きがあるとされており、集中力や記憶力を高める働きが期待されています。チモールには抗菌作用や抗ウィルス作用もありますので、仕事や勉強などの頑張り時に使うと体調管理にも役立ってくれるでしょう。

また集中力以外に、神経を刺激することで活力を蘇らせることにも繋がると考えられています。気力を失ってしまった時・やる気が出ない時・自信がなく前に踏み出す勇気が持てない時など、後ろ向きな気持ちをサポートして欲しい時に利用されています。古くはタイムの香りは勇気を与えると信じられてきましたし、現在でも疲労やストレスを和らげて集中力を維持する手助けが期待されている精油として期待されていますよ。自分の仕事・目標に向かって邁進している方を活力アップと集中力アップ両方の面からサポートしてくれる存在と言えるかもしれません。

肉体面への作用と効果

料理用に利用されている多くのハーブと同様に、タイムも健胃・食欲増進など消化器系への働きかけを持つと考えられています。また、伝統医学的な効能と共に強心作用や血圧上昇作用を持つという説を唱える方もいらっしゃいます。このためタイム精油は心臓・循環器系への働きを促し、血行不良や低血圧・貧血などの軽減に役立つ精油として紹介されることもある存在。血行促進や精神面への働きかけと合わせて食欲不振や消化不良の改善に繋がる可能性がありますし、消化機能が整うことで体全体の強壮にも役立ってくれるでしょう。疲労回復や性的強壮、めまいや立ちくらみを起こす方や慢性的な疲労感・体のだるさを感じる際に用いられることもあるそう。根拠や有効性については不明瞭な部分が多いですが、ちょっとお疲れの時に香らせてみても良いかもしれません。

ちなみに、タイム系の精油はフェノール類の含有率が高いことから刺激性・毒性が取り上げられることの多い存在。しかしフェノール類も人体に対して有益な働きかけがあると考えられており、特徴成分とも言えるカルバクロールには鎮痛作用や抗炎症作用を持つ可能性を示唆した報告もあります。2002年にはカルバクロールが“高脂肪食を与えられたマウスの脂肪生成と炎症に関与する遺伝子発現を調節する”という韓国の研究が『The Journal of Nutritional Biochemistry』に掲載されており、肥満予防成分としても注目されている存在。日本で一般的に流通している精油は飲用NG・雑貨扱いのものでもありますし、カルバクロールの作用についても可能性段階のものがほとんどですが、研究が進めばさらに健康メリットが報告されるかもしれません。

風邪などの感染症予防にも

タイムの精油の主成分であるチモールやカルバクロール、特にチモールには非常に強い殺菌効果と抗ウイルス作用が認められている成分でもあります。このためタイム精油は風邪・インフルエンザなどの感染症予防に高い効果が期待出来る精油として注目され、空気が乾燥しているときや免疫力の低下が気になる時にデュフューザーなどで拡散すると役立つのではないかと考えられています。そのほか利尿作用と合わせて膀胱炎など泌尿器・生殖器系の感染症に有効とする見解もあります。

またタイムは抗菌作用以外に去痰作用や咳・喉の痛みを緩和する働きも期待されているため、風邪ひきはじめで喉に不快感があるとき・咳や気管支炎の軽減などにも取り入れられています。風邪をひいた時にタイムのハーブティーがよく飲まれるのも、芳香成分による働きが大きいのではないかと考えられていますよ。

その他に期待される作用

皮膚・頭皮への働きかけ

コモンタイムの精油は皮膚刺激性が高いため、スキンケアなどに利用されることはあまりありません。しかし消毒作用や強い殺菌・殺真菌作用を持つと考えられることから、虫刺されのケア・水虫など真菌性の皮膚トラブルに対して有効と考えられています。そのほか炎症を鎮め治癒を促進する働きもが期待できることから切り傷や火傷・湿疹などのケアに、刺激作用から頭皮のフケ予防や脱毛防止に利用されることもあります。1998年に『Archives of Dermatology』に発表されたスコットランドの研究では、頭皮マッサージに使うことで円形脱毛症の治療に役立つ可能性も示唆されています。

ただし敏感肌の方などの場合はきちんと希釈して利用した場合でも、皮膚を刺激してしまい炎症を起こす原因となる危険性もあります。肌に使用する場合は少量ずつ、パッチテストと併用して取り入れるようにしましょう。肌への使用を考えている場合はタイム・リナロールなどを選んだほうが無難です。

コモンタイムが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • 集中力・記憶力のサポートに
  • ストレス・精神的疲労感
  • 無気力・自信喪失時に
  • 活力が欲しい時に
  • やる気を高めたい
  • 前向きになりたい
  • 精神的に強くなりたい

【肉体面】

  • 血行不良・低血圧
  • 食欲不振・消化不良
  • 慢性的な疲労感がある
  • 風邪・インフルエンザ予防に
  • 喉の不快感・咳の軽減に
  • お部屋の空気浄化に
  • 水虫・虫刺されなどのケアに

コモンタイム(ホワイトタイム)の利用と注意点について

相性の良い香り

ハーブ系の香りと相性が良いとされています。コモンタイムはタイム系精油の中でもスパイシーさを強く感じさせる香りですから、同系統の香りを持つスパイス系ともブレンドしやすいでしょう。また香りの濃厚さ・クセが気になる場合は柑橘系の香りと組み合わせると中和されます。

コモンタイムのブレンド例

コモンタイム精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 高血圧の方、病のある方は医師に相談の上利用してください。
  • 刺激・作用が強いので使用量や濃度に注意しましょう。
  • 皮膚刺激があるため敏感肌の方は芳香浴でも注意が必要です。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
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参考元