【アロマ】ローズ・オットー精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】ローズ・オットー精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

様々な活用が期待される「精油の女王」

ローズ・オットーはバラの花びらを水蒸気蒸留した精油(エッセンシャルオイル)。アブソリュートと比べると香りはライトですが、残留溶剤などの懸念が少ないことからスキンケアにも使用されています。デイリー使いには敷居が高い精油ですが、抗うつ作用や女性特有の精神的不調軽減に役立つ可能性も示唆されています。

ローズオットー(Rose otto)のイメージ画像

ローズ・オットーとは

ローズ(バラ)の特徴・歴史

ローズ(バラ)は“花の女王”や“香りの女王”とも称される、見た目も香りも高い人気を誇る植物。バラの香りは女性に好まれやすい香りでもあり、さり気なくふんわりと香ると優しく女性的な、濃厚な香りだと高級感・ゴージャスさも演出してくれます。認知度も高く、老若男女問わずビジュアル・香りをイメージしやすい存在の一つでもあるでしょう。

そんな薔薇(バラ)の花びらから蒸留されたローズ・オットー。時に「女性のための精油」とも称されるように、女性の心と身体のサポートに優れた存在として民間医療や自然療法の中で多く使われています。古来からバラは女性を美しくする働きがあると考えられ、時には媚薬として、時には“若返り”や“不老長寿”の薬として用いられてきた歴史もあります。

ちなみに、アロマテラピーの歴史に“水蒸気蒸留法を確立した人物”として登場する、アラビアの哲学者で医学者のイブン・シーナー。彼が初めて蒸留に用いたのがバラの花だったことから、はじめに確立されたのはローズ精油だったとも言われていますよ。精油を抽出した際に出来る芳香蒸留水(ローズウォーター)も治療に取り入れていたのだとか。

精油1滴がバラの花200個分とも言われるほどバラの採油率は非常に低く、精油の中でもトップクラスに高価な部類に含まれています。水蒸気蒸留法が確立された約1000年前には、ローズ精油は金などの貴金属・宝石類よりも貴重なものだったのではないでしょうか。現在でも最高級のローズオットーは「液体の宝石」と呼ばれています。

香料原料となる“バラ”は主に2種類

日常的に使用されている「ローズ(薔薇/バラ)」という言葉はバラ科バラ属に含まれる植物の総称、もしくはその中で園芸用に栽培された種類を指す言葉として利用されています。バラ属の分類・種数については様々な見解があり専門家でも意見が別れていますが360以上、栽培品種まで数えると更に多くの種類に分かれます。

ローズという言葉がバラ属植物の総称ですから、バラ属の植物から採油されたオイルは全てローズオイルになります。しかし、精油・香料の原料としては、ほとんどのものが下記2種のどちらか。ローズ・ド・メイ(Rose de Mai)と呼ばれているのもRosa × centifolia系統種です。

  • Rosa × damascena
    …ダマスクローズ/ブルガリアンローズ
  • Rosa × centifolia
    …キャベッジローズ/プロヴァンスローズ

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ローズ・アブソリュートとローズ・オットーの違い

古くは抽出方法に合わせて使用するバラの品種が決められていた時期もあるようですが、現在は純粋に抽出法によって“ローズ・オットー(Rose otto)”と“ローズ・アブソリュート(rose absolutes)”と区別されることが大半[1]となっています。近年は超臨界二酸化炭素抽出(CO2蒸留法)による“ローズ・CO2エキストラクト”も生産されていますが、こちらの流通量はまだ多くありません。

ローズ・オットーの“オットー”は水を意味するトルコ語が由来で、バラの花弁から水蒸気蒸留された精油を指します。対してローズ・アブソリュートは呼び名の通り溶剤を使って抽出したもの。アブソリュートは厳密には“精油(エッセンシャルオイル)”ではないので、厳密にはバラの精油=ローズ・オットーとなりますね。

とは言え、ローズ・アブソリュートも精油のような感覚でアロマテラピーでも取り入れられていることが多い存在。溶剤抽出やCO2蒸留法の方が、熱によって精油成分が壊されないこと、揮発しない芳香成分も取り出すことが出来ることから植物そのものに近い香りが得られるという特徴があります。バラの香りを楽しみたいという場合であれば、ローズ・アブソリュートの方が「らしい」香りを楽しめるでしょう。

⇒ローズ・アブソリュートはこちら

ただし、ローズ・アブソリュートは抽出に溶剤が用いられている関係から、皮膚利用を懸念する声もあります。水蒸気蒸留の場合は化学薬品の残留を心配する必要がないことから、アロマトリートメントやスキンケアなど肌に塗布するような使い方をする場合には安全性が高いと言えます。人に対する働きかけについての研究も多くオットー(精油)の方が行われていますので、メンタルサポートやスキンケアなどのメリットも期待して取り入れる場合はローズオットーの方に軍配が上がりそうですね。

なお、ローズオイルはゼラニウムパルマローザ・合成香料による偽和が多いことも指摘されています。あまりにも低価格なものは避けた方が無難。ローズオイルは低温で凝固する性質があり、ローズ・オットーも科学的処理をされていないものであれば10℃程度になる粘度が高まる・半固形状になります。アブソリュートもオットーも、冷やして粘度の変化があるかが簡易的な品質目安される場合もあります。

香料原料データ

通称
ローズ・オットー(Rose otto)
学名
Rosa centifolia
Rosa damascenaなど
別名
Rosa centifolia:キャベッジローズ、プロバンスローズ
Rosa damascena:ダマスクローズ、ブルガリアンローズ
科名/種類
バラ科バラ属/低木
主産地
ブルガリア、トルコ、モロッコ、ロシアなど
抽出部位
花(花弁)
抽出方法
水蒸気蒸留法
淡黄色~オリーブ色
粘性
低い
ノート
ミドル~ベースノート
香り度合い
強め
精油成分
シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ファルネソール、リナロール、フェノール類(オイゲノールなど)、フェニルエチルアルコール、ローズオキシド類、そのほか微量成分多数
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア、防虫

グリーンな印象もある、エレガントかつフレッシュな薔薇の香り

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ローズ・オットー精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

自然療法の中で、薔薇の香りは心を癒し幸福感をもたらす働きがあると考えられてきました。ローズ・オットーとローズ・アブソリュート、どちらもメンタル面のサポートとして優れた効果を持つと扱われてきた背景があります。しかし、芳香族アルコール(フェニルエチルアルコール)が全体の50%以上を占めるローズ・アブソリュートに対し、ローズ・オットーに含まれている芳香族アルコールは概ね1%未満。含有成分はかなり異なっています。

ローズ・オットー精油は、シトロネロールとゲラニオールを筆頭に、モノテルペンアルコール類の比率が高くなっています。含有率の高いシトロネロールやゲラニオールは、どちらも鎮静作用や抗うつ作用が期待されている成分。人を対象とした研究でも、ローズオイルの芳香には鎮静・リラックス効果がみられたとの報告が多くあります。ローズオイルによる嗅覚刺激によって生理的および心理的リラクゼーションを誘発する可能性を示唆した、日本の千葉大学に論文も『Complementary Therapies in Medicine』に掲載されています[2]。

また、2012年『Complementary Therapies in Clinical Practice』にはローズオットーとラベンダー精油のアロマセラピーを行った産後女性グループはコントロールグループに比べ産後うつ病スケール(EPDS)および全般性不安障害スケール(GAD-7)が大幅に改善されたことが報告されています[3]。その他にもローズオイルによってリラックス効果や不安レベルの低下効果を観測した報告はいくつも存在し、ストレスや不安の軽減・うつ病の予防や治療に役立つ可能性が示唆されています[4]。

現時点で医学的に有効性が認められているものではありませんが、メンタルサポートとして期待できる要素はあると言えるでしょう。また、伝統的自然療法・民間療法の中でローズの精油は高揚作用を持つ精油の一つにも数えられています。精神的に傷ついた時や自信喪失・無気力感に苛まれている時に、再び前向きになれるパワーを与えてくれるなんて表現されることもありますよ。ストレスや緊張の緩和だけではなく、前向きさ・幸福感を取り戻すサポートにも役立ってくれるかもしれません。

肉体面への作用と効果

ローズ・オットーは鎮静作用や抗不安、抗ストレスに役立つと考えられている精油。このためストレス軽減などメンタル面のサポートと合わせて、神経性の胃痛や腹痛・下痢などの軽減に役立つと考えられています。鎮静作用(自律神経の興奮を押さえる)が報告されていますから、動悸や息切れ・血圧上昇を抑えるなどの働きをも期待できるでしょう。

また、イスファハン医科大学付属病院で手術後の子どもに対して行われた二重盲検プラセボ対照臨床試験では、ローズオイルを吸入したグループの子どもに痛みのレベルが大幅に減少したことが2015年『Iranian Journal of Nursing and Midwifery Research』に掲載されています。そのほかにも鎮痛効果がみられたという報告はあります[4]し、ハーブ療法の中でもローズオイルは鎮痛作用を持つ精油として扱われています。より幅広い領域での鎮痛効果にも期待できます。関節痛などの痛みのケアに取り入れてみても良いかもしれません。

女性領域でのサポートにも期待

バラは自然療法の中で、女性領域でのサポート・子宮の強壮に役立つ植物としても使われてきました。子宮の強壮作用があるかは分かっていませんが、ローズ精油が月経トラブルの軽減に役立つ可能性を示唆した研究はあります。2014年『Journal of Obstetrics and Gynecology』に掲載された月経困難症女性を対象にした試験では、アーモンドオイルでマッサージをしたグループよりも“ローズ精油を使ってマッサージをしたグループのほうが、痛みの重症度が有意に低くなった”ことが示されています[5]。そのほかにも月経困難症・月経痛の軽減は報告されています[4]し、鎮痛作用を発揮する可能性もありますから、生理痛対策に取り入れてみる価値はありそうですね。

また、抗不安作用やリラックス効果などメンタル面でのサポートに優れた働きが期待できることから、月経前症候群(PMS)や更年期障害による精神的不快症状の軽減にも活用されています。ゼラニウムと同様に女性ホルモン様(エストロゲン様)作用をもつ成分は含まれていない、含まれていてもごく微量であると考えられますから、ホルモン様作用を持つ可能性がある精油を使うのは不安という方にも適しているでしょう。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

ローズオットーは高い美肌効果が期待されている精油の一つ。スキンケアにおすすめの精油として紹介される機会も多い存在ですし、石鹸やスキンケア製品・化粧品類などにも広く配合されています。ローズ・オットーのように残留溶剤の懸念がないことはもちろんのこと、シトロネロールやゲラニオールなどの働きで皮膚を柔らかくする効果も期待されています。実際にローズオイルはラベンダーと同じく、皮膚に対する柔軟作用や保護作用を持つ“エモリエント成分”として扱われていますよ。

また、ローズオットーは抗炎症作用を持つことから酸化による皮膚のダメージを予防する・弾力を回復するなどお肌の若返りにも期待されています。アンチエイジング用としても人気がある精油の一つ。様々なる働きが期待されてるローズ・オットーは「乾燥肌・脂性肌・成熟肌・敏感肌と肌タイプを選ばずに使用でき、多くの人の肌を肌をベストコンディションに導いてくれる精油」と称されることもあります。

とは言え、皮膚に対しての有効性についてはさらなる研究が必要と結論付けられているものが大半で、全ての方の肌に有益だと言い切れるものでもありません。使用する場合はパッチテストを必ず行うようにして下さい。

手作り香水・虫除けにも

抗炎症作用から虫刺されに良いとも言われていますが、ローズオットーの主成分であるシトロネロールやゲラニオールには昆虫忌避作用が報告されている成分でもあります。香りを纏うことで虫除けとして役立ってくれる可能性もあります。

贅沢にローズオイルを蚊除けに利用するということはあまりないでしょうが、手作り香水などを作る時に若干の虫除け効果が期待できるのは嬉しいのではないでしょうか。市販されている虫除けはティーツリーペパーミントなどの清涼感ある香り、もしくはハーバル調の香りの物が多いので、フローラル調の香りが好きな方は香水兼虫除けを自作してみても良いと思います。

ローズ・オットーが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • 気分の落ち込み・抑うつ
  • ストレス・不安
  • 緊張・精神的な疲労感
  • イライラしやすい
  • 無気力・自信喪失
  • 幸せな気分になりたい

【肉体面】

  • ストレス性の不調に
  • 神経性の動悸・息切れに
  • 痛みの緩和ケアに
  • 月経前症候群(PMS)・生理痛に
  • 更年期障害の予防や軽減に
  • スキンケアに

ローズ・オットーの利用と注意点について

相性の良い香り

フローラル系・オリエンタル系の香りと相性が良いとされています。ローズ・アブソリュートよりもグリーンな印象が強いので、爽やかな印象のハーブ系とも組み合わせやすいでしょう。甘さやフローラル感が全面に出るのが苦手な方は柑橘系とブレンドすることでもライトな印象になります。

ローズ・オットーのブレンド例

ローズ・オットー精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • 高濃度での使用・長時間の使用は控えてください。
  • 低温で固まる性質があります。
    固まってしまった時は手のひらなどゆっくりと温め、元に戻して利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元