【アロマ】パインニードル/スコッチパイン精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】パインニードル/スコッチパイン精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

空気浄化とリラックスを兼ねて…

極端に好き嫌いが少ない、樹木系の中でも親しみやすいスコッチパイン(オウシュウアカマツ)の葉から抽出されたパインニードルの精油。老若男女・TPO問わずに使いやすい、ライトで若干ドライな印象もある森の香りが特徴的です。精油成分としてはα-ピネンを筆頭としたモノテルペン炭化水素類が多く、リラックス効果や空気浄化にも役立つと考えられています。アレルギーケアにも注目されていますが、刺激性があるので使用には注意が必要。

パインニードルのアロマ解説

パインニードル/スコッチパインとは

スコッチ・パインの特徴・歴史

香料植物や精油に馴染みがなければ「パインの香り」と言われると、果物のパイナップルフレーバーを想像されるかもしれません。しかし本来“パイン(pine)”という言葉はマツ科マツ属に分類される、日本でもお馴染みの松の仲間を指す言葉。マツ属の属名が“Pinus”であり、私達にとって見慣れている赤松も英語ではJapanese red pineと呼ばれています。余談ですが果物の呼び名となっているパイナップル(pineapple)という言葉も、元々は“松(pine)”の“果実(apple)”で松ぼっくりを指す時に使われていた呼称という説もあります。松ぼっくりに似た外見を持つ果物が発見された時にそう呼ばれ、食用としても使う機会が多かったこともあって特定の果物の名前として定着したのだそうですよ。

精油の場合も単に「パイン」と呼ばれているものはマツ属に属する樹木から抽出されたものを指すのが一般的です。マツ属の植物と言っても日本でもよく見かける赤松・黒松をはじめ様々な種類がありますが、精油原料として最もオーソドックスなのは学名Pinus sylvestris、和名でヨーロッパアカマツと呼ばれる樹木。呼び名の通り北ヨーロッパを中心に分布している樹木で、自生している地域名を冠してスコッチ・パイン(Scotch pine)やバルティック・パイン(Baltic pine)などと呼ばれることもあります。ヨーロッパアカマツは原産域以外に北アメリカやニュージランドにも植林されており、世界で最も広く分布するマツという評価もあるそう。その関係からマツ属のた厳密にはめ“モミの木”とは言えないものの、50年位前まではアメリカでクリスマスツリー用の木としても親しまれていたようです。

ヨーロッパアカマツ(スコッチパイン)に限らずに見ると、マツ属の植物というのは人間との関わりが深い樹木。古代から世界各地で木材として使用されてきたのはもちろんのこと、東アジアを中心とした地域では冬でも緑を保つ常緑針葉樹であることから松=不老長寿のシンボルと捉えている地域が多くあります。日本でも松はお正月の“門松”など特別な意味を持って使われてる植物ですよね。種は違いますが、古代ギリシアやローマでもパイン=松の木は豊穣とお酒の神様ディオニュソス/バッカスに関わる樹木として大切にされていたそう[1]。ギリシアには2,000年以上の歴史を持つとされるワイン“Retsina(レッチーナ)”があり、元々はブドウ果汁を容器に入れて松の樹脂で蓋をすることで発酵させたものとされています。酒神に関係する樹木、というのも納得ですね。ちなみに酒樽が発明されると松の樹脂で蓋をする必要性はなくなりましたが、松脂フレーバーのワインを好む方もおり現在まで受け継がれています

また、古代エジプトでは料理に松の実を使用していた・古代エジプトや古代ギリシアでは感染症・気管支炎・肺炎・結核などに良い薬としてスコッチパインを活用していたとも伝えられています。アラブなど他の地域でも伝統医療の中で“薬”として呼吸器系のケアにスコッチパインの葉や若芽を、皮膚疾患に松脂を使うことがあったようです。現在の医療行為で松葉や松脂を使用することはありませんが、抽出された精油は爽やかな森の香りを持つことから「癒し」の芳香として世界中で愛されています。ギリシアのワインだけではなく、食品香料としても使われていますよ。加えてパイン精油はα-ピネンなど抗菌・消毒作用が期待されるα-ピネンなどのモノテルペンを多く含むことから、デオドラント系の石鹸や入浴剤、洗剤、消毒スプレーなどにも配合されています。香りもユニセックスで好き嫌いも激しくない部類ですから、手作り香水などにも使えそうですね。

パイン(松)系精油の種類について

エッセンシャルオイルで「パイン」と言う場合はスコッチパインを指すことが多いとご紹介しましたが、他にもドゥオーフパイン(マウンテンパイン)・ブラックパイン(ヨーロッパクロマツ)・スイスパインなどマツ属の樹木を原料とする精油は存在しています。その中でスコッチパインが主力として扱われるのは、毒性や刺激性が少なく利用しやすいと考えられているため。スコッチパインの以外のマツ属精油は皮膚刺激性が高く、一般家庭での使用は適さないとされているものがほとんどなのです。スコッチパイン以外に利用しやすいとされているのはロングリーフパイン(P.palustris)くらいでしょうか。

また、スコッチパイン(P.sylvestris)を原料としたものであっても、木部から抽出された精油もあります。こちらは針葉から採油されたものよりも品質が悪く、アロマテラピーとしては利用しないほうが良い精油とされています。このため針葉から抽出されたエッセンシャルオイルを「パイン・ニードル」と呼んで区別する場合もあります。一般的にはスコッチパイン=パインニードルとなりますが、単に「パイン・ニードル」という名称だけでは“どのパインか”に不安が残ります。なので、購入時にはしっかりと学名や抽出部位を確認することをお勧めします。

香料原料データ

通称
パイン・ニードル(Pine needle)
別名
ヨーロッパアカマツ、オウシュウアカマツ(欧州赤松/European redwood)、スコッチ・パイン(Scots pine/Scotch pine)、リガパイン(Riga pine)など
学名
Pinus sylvestris
科名/種類
マツ科マツ属/常緑針葉樹
主産地
スコットランド、フランス、ブルガリア、ハンガリー、ロシア、北米(アメリカ、カナダ)など
抽出部位
針葉
(※球果を含めた精油も有)
抽出方法
水蒸気蒸留法
無色~淡い黄色
ノート
トップ~ミドルノート
香り度合い
中~強め
精油成分
α-ピネン、カンフェン、β-ピネン、β-カリオフィレンδ-3-カレン、サビネン、リモネン、カジノールなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア・ハウスキーピング

フレッシュかつドライ、ややバルサム調を含む森林の香り

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パインニードル精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

スコッチパイン(パインニードル)の精油はウッディー系には分類され、森の中を散策している時に感じる香りのような印象。精油成分は産地や生育条件によって組成が異なることも分かっていますが、主成分と言えるのはα-ピネンを筆頭としたモノテルペン炭化水素類で、特に新鮮な葉から採油されたものはモノテルペン炭化水素類の含有率が高くなります[2]。パインに限らず針葉樹の特徴成分とも言えるα-ピネンは芳香を吸引することで森林浴に近いリラックス効果とリフレッシュ効果を得られると考えられており、ヒトを対象とした試験でも心拍数の低下・リラックス効果が得られることが確認されています[3]。このためパイン精油はストレスや緊張によって興奮している神経系を鎮静させ、副交感神経活動を高めることで気持ちを落ち着けたりリラックスするための手助けが期待されています。

神経系に対する鎮静作用は興奮やイライラの軽減だけではなく、緊張状態が続くことで起こる気持ちの落ち込み・無気力感や倦怠感の軽減にも繋がる可能性があります。また、自然療法の中でスコッチパインの精油は刺激作用や強壮作用を持つ精油として扱われることもありますし、ドライでシャープな森の香りにはリフレッシュ効果も期待できます。気持ちを切り替えたいときや思考をクリアにしたい時、集中力低下が気になっているときなどに香らせてみても良いでしょう。パイン精油は精神面の不調を幅広くサポートしてくれる「心身の浄化に役立つ精油」と称す声もあります。鎮静系とは言え眠くなる類の精油ではありませんから、様々なシーンで活用できそうですね。

肉体面への作用と効果

パインニードルの特徴成分であるα-ピネンは抗菌作用や抗ウィルス作用を持つことが報告されている成分。低濃度での暴露によって抗炎症特性や免疫システムをサポートする可能性も示唆されている[4]ことから、感染症予防に役立つのではないかと考えられています。また、α-ピネンだけではなく、パインニードルには抗炎症作用や抗菌・抗ウイルス作用が期待されるリモネンやカンフェンなどの成分も含まれています。このためリウマチ、痛風、坐骨神経痛、関節炎などの炎症と痛みの軽減にパインニードル(スコッチパイン)の精油は使用されており、抗菌・抗ウィルス性の高さから風邪やインフルエンザ予防としても期待されています。

そのほかα-ピネンは低濃度で使用することで気管支拡張を促す働きが、パインニードル精油として見ると去痰作用を持つのではないかという説もあります。抗炎症作用と合わせて気管支炎や喘息、鼻水や花粉症の症状など呼吸器系の不調緩和に役立つ可能性もあるでしょう。古代ギリシアで感染症対策や気管支炎などの呼吸器症状に用いられていたというのも納得ですね。ただし、こうしたパインニードルの作用や効能については科学的に実証されたものではなく、伝統や民間療法の中で伝えられてきた効能が大半を占めています。有効性が認められているものではありませんので呼吸器系に疾患がある方、症状が重い場合は医療機関で適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

循環機能サポートにも期待

α-ピネンやリモネンなどモノテルペン炭化水素類の働きで血行促進効果が期待できること・心拍を整える働きが期待される酢酸ボルニルを含むことなどから、パイン精油は冷え性や循環不全の改善にも役立つと考えられています。血液循環の悪さから起こるだるさや倦怠感軽減、精神面の働きかけと合わせて疲労回復のサポートなどにも役立ってくれそうですね。血行を促すことから筋肉痛や肩こり・腰痛の軽減にも期待されています。そのほか鬱滞除去作用を持つとする説もあり、むくみやセルライト対策のマッサージに取り入れられることもありますが、このあたりの有効性についても科学的に認められたものではありません。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

スコッチパイン(パインニードル)の精油は優れた抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用を持つと考えられることから、ニキビ対策や水虫などの皮膚感染症予防に役立つと考えられています。そのほか毛細血管を拡張することで血行を促す働きが期待できることから、肌のくすみや目の下のクマが気になる方に適した精油であるという説もあります。ただしスコッチパインの精油は皮膚を刺激する危険もありますから、皮膚の薄い顔へ使用する前にパッチテスト→手や足裏などのマサージなどから取り入れてみるなどの方法がお勧めです。

加えて近年はスコッチパイン(ヨーロッパアカマツ)とブラックスプルースは優れた抗炎症作用を持つ精油として、アトピー性皮膚炎やアレルギー性の皮膚炎症による炎症・痒みを抑えるステロイド代用品になるのではないかと注目されています。こうした説が浮上したのは、スコッチパインに“Cortisone-like”な働きがあると紹介している[5]サイトや書籍が存在するためと考えられます。Cortisone(コルチゾン/コーチゾン)というのは強力な抗アレルギー作用を持つ、副腎皮質ステロイドホルモンの一種。スコッチパインの精油はこのコルチゾンに似た働き=コルチゾン様作用を持ち、かつステロイドのような副作用の心配が少ないことからアレルギーケアに適した精油として紹介されているケースもあります。

パインニードルが花粉症の軽減に役立つのもこのコルチゾン様作用によるものだと主張されていますが、調べた限りスコッチパインの針葉から抽出された精油にコルチゾン作用が見られたというエビデンスは発見できませんでした。パイン系の精油の中ではスコッチパインが最も皮膚に利用しやすい精油と言われていますが、皮膚刺激性・アレルギー反応を引き起こす可能性がある精油にも数えられています。有効性を示す十分なデータもありませんので、個人的にはお勧めしません。

空気浄化剤として

パインの精油は優れた抗菌特性とデオドラント作用があり、低濃度で香らせるとあまり好き嫌いのない香りでもある事からお部屋の空気清浄用としても優れています。樹木系の精油の多くには悪臭物質の浄化機能・シックハウスの原因物質であるホルムアルデヒドを分解する作用を持つ可能性も報告されています[6]。パイン(マツ属)の精油についての報告は掲載されていませんが、他の樹木精製油と同様にα-ピネンを含んでいることから空気浄化に役立つ可能性もあるかもしれません。

また、古くはパインの葉を詰めて作られたマットレスがノミ・シラミ除けに使われていたという伝承もありますし、成分的に見てもカンフェンなど昆虫忌避作用=虫除け効果が期待されている成分も含まれています。確実に虫除けや空気浄化にに役立つかは定かでありませんが、リラックス効果や風邪・インフルエンザ予防に繋がる可能性もありますから、ルームフレグランス感覚で香らせてみると良いかもしれません。

パインニードルが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労
  • 気持ちの落ち込み
  • 無気力・自己否定
  • 緊張・イライラ・不安
  • リラックスしたい
  • リフレッシュしたい
  • 集中力を高めたい

【肉体面】

  • 鼻水・鼻づまり・鼻炎
  • 気管支炎・咳・のどの痛み
  • 花粉症などのアレルギー軽減に
  • 血行不良・肩こり・筋肉痛
  • 関節炎・神経痛の緩和に
  • 皮膚の抗菌・消毒に
  • 空気清浄・消臭剤として

パインニードルの利用と注意点について

相性の良い香り

同系統である樹木系、香りに軽さを出してくれる柑橘系との相性が良いとされています。似た印象を持つハーブ系・樹脂系の香りとも比較的組み合わせやすいでしょう。

パインニードルのブレンド例

パインニードル精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • マツ類にアレルギーのある方は使用を避けましょう。
  • 皮膚刺激性が基部されている精油です。敏感肌・アレルギーがある場合は低濃度での芳香浴でも炎症を起こす可能性があるため注意して使用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元