【アロマ】ヤロウ精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】ヤロウ精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

お肌へのメリットが期待される“青色”精油

カモミールジャーマンと同じくアズレン誘導体(カマズレン)を含み、濃い青色をしたヤロウ精油。香りはハーバル感が濃いため好き嫌いが分かれるものの、ストレスの軽減や睡眠サポートなどリラックス効果も期待されています。アズレン誘導体には抗炎症作用などが報告されていることから、皮膚のケアに注目されている精油でもありますよ。ただし皮膚刺激性も危惧されているためパッチテストは必須。

ヤロウ精油(ブルーヤロウ/blue yarrow))のイメージ画像

ヤロウとは

ヤロウの特徴・歴史

ヤロウ精油は“ブルーヤロウ(blue yarrow)”とも呼ばれるように、ジャーマンカモミールと同様に濃い青色をしていることが特徴的な精油です。濃い青色は、水蒸気蒸留の工程でマトリシンが分解されて形成される“アズレン誘導体(カマズレン/chamazulene)”という成分によるもの。カマズレンは抗酸化作用や皮膚の炎症軽減効果を持つ可能性が示され[1]、スキンケア成分として注目されている成分。ジャーマンカモミールほど知名度・流通量は多くありませんが、ヤロウ精油も同じくカマズレンを含む精油として皮膚利用面で期待されています。

ブルーヤロウ精油の原料となるヤロウは、学名をAchillea millefoliumというキク科植物。ノコギリソウ属に分類されており、和名はセイヨウノコギリソウ(西洋鋸草)。和名は葉軸の左右に鳥の羽のように並ぶ葉(羽状複葉)の形状がノコギリに似ていることが由来です。より身近な例で言えば、シダのような形状の葉。ヤロウの別名には、“milfoil(ミルフォイル)”というものもありますが、こちらも「千枚の葉」を意味する言葉が由来[2]。ビジュアルから命名されたのでしょう。

ヤロウ(Achillea millefolium)はユーラシア大陸に広く分布している植物。ヒトとの関わりも深く、6万年前のイラクのネアンデルタール人の埋葬洞窟からも、化石化しノコギリソウの花粉が発見されています[2]。また、薬用植物として傷のケアに使用されてきた歴史も古く、ヤロウ=ノコギリソウ属を示すのに使われているAchilleaという言葉もギリシア神話に登場するアキレスが由来。

ギリシア神話ではトロイ戦争の時に英雄アキレスが傷ついた兵士たちの手当にヤロウを使った[2]、というエピソードが残されているのだとか。1世紀に『博物誌』を著した大プリニウス(Pliny the Elder)もヤロウについての記述を残しており、ローマでは“Herba militaris(兵士のハーブ)”と呼ばれていました。そこから転じて、英語でも“soldier’s woundwort”と呼ばれることもあります。古代から止血・傷口のケアに良い薬草として使われ続けて生きたことがうかがえる別名ですね。

現在でも民間療法・ハーブ療法でヤロウを煮出したお茶=ヤロウティーは強壮・発汗・解熱作用などが期待できるハーブとして活用されています。そのほか独特の香りがあることから料理用ハーブとしても使用されますし、かつてはホップが主流になる以前のビールのフレーバー・タバコ代用品として利用されていた事もあります。地域によっては若葉を茹でて野菜感覚で食べることもあるそう。

また、ヤロウは薬草としてだけではなく、宗教・呪術的パワーを持つ植物と信じられていた歴史もあります。スコットランドでは占い・お守り・魔除けに、イギリスでは恋占いに、中国では占いの道具にも使用されていたのだとか。中世ヨーロッパでは悪魔を遠ざける、魔除けのハーブとしても活用されました。古い時代は病気や精神・神経疾患なども「悪魔の仕業」というような捉え方をする傾向にありましたから、スピリチュアルな部分ではなく、経験的にヤロウのハーブとしての効果を認めての利用だったのかもしれません。

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ちなみに、同じヤロウ(Achillea millefolium)とされる植物でも、精油成分が大きく異なることが分かっています。化学組成の差は植物の生育環境・収穫時期等によって変化すると考えられていますが、明確な条件については断定されていません[3]。Achillea millefoliumが原料のヤロウ精油でも、カマズレン含有率に差があることも分かっています。

香料原料データ

通称
ヤロウ(Yarrow)
別名
西洋鋸草(セイヨウノコギリソウ)、コモンヤロウ(common yarrow)、ヤロウブルー(yarrow・blue)、ソルジャーズ・ウーンドワート(soldier’s woundwort)、ミルフォイル(milfoil)など
学名
Achillea millefolium
科名/種類
キク科ノコギリソウ属/多年草
主産地
ハンガリー、カナダ、ドイツ、フランス、ブルガリアなど
抽出部位
花、葉
抽出方法
水蒸気蒸留法
濃い青色
粘性
少しある
ノート
ミドルノート
香り度合い
強い
精油成分
サビネン、1,8-シネオール、カンファー、β-ピネン、α-ピネン、カズマレン、ボルネオール、α-ツジョンなど
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・スキンケア・ヘアケア

カンファー感の中に甘みのある、スパイシーでハーバルな香り

ヤロウ精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

ヤロウの精油はラベンダーカモミールなどとともに、ストレス緩和やリラックス用として利用されています。特にストレスが多いと感じている方、寝付きが悪い・睡眠が浅いと悩んでいる方に適した精油とされていますよ。ストレスによって気持ちの強張りや怒りを感じる、嫌な事を思い出したり、過去の傷が疼くような場面に適しているという説もありますよ[1]。

また、ヤロウ精油は鎮静作用と強壮・刺激作用を併せ持ち、精神のバランスを調整する精油という説もあります。成分的に見ても鎮静や強壮作用が期待されているα-ピネン、刺激・覚醒作用が期待されているカンファー、など異なる方向性の成分が含まれていることは事実。

しかし、ヤロウ精油の芳香が精神や神経に与える影響についての研究はほとんど行われていません。2012年『Journal of Ethnopharmacology』に発表された動物実験など、ヤロウ(Achillea millefolium)のアルコール抽出物の投与によって抗不安作用が見られた[4]という報告はあるものの、ヤロウ抽出物投与による研究の場合はフラボノイド類などの働きも大きいと考えられます。

香りの感じ方は個人差もありますので、民間療法上の効能は過信せず、自分に合う香りかどうかを考えてみてください。

肉体面への作用と効果

ヤロウの精油は抗酸化作用と抗炎症作用を持つ精油として注目されています。鎮痙作用や免疫系の強壮作用、解熱作用を持つという見解もある[3]ことから、風邪や呼吸器系の不調緩和にも使用されています。そのほか消化機能サポート・胃腸トラブルのケアなどに良いと紹介されることもありますが、こうした働きの根拠として挙げられている研究には、精油ではなくヤロウ抽出物・その投与による実験も多いです。

ハーブとしてのヤロウの有用性はフラボノイドの作用によるものも多いと考えられていますし、日本では精油の服用はNG。精油は医薬品や健康食品ではありませんので、過度な効果は期待しないようにしましょう。

女性領域のサポートにも

ヤロウの精油はマジョラムなどと共に“エメナゴーグ(Emmenagogue)”と呼ばれる、骨盤領域と子宮の血流を刺激す促進ハーブとしてヨーロッパで利用されてきた歴史があります[2]。作用秩序や有効性については断定されていませんが、現在でも伝統的用途と合わせてヤロウ精油は女性ホルモンのバランスを整える働きが期待され、生理周期を整えたり、更年期障害の緩和などに活用されています。鎮痙・鎮痛作用と合わせて生理痛や月経困難症のケアに使われることもあるようです。

その他に期待される作用

傷跡・炎症のケアに

ヤロウは数千年前から傷の手当に使用され、兵士のための薬草なんて別名もあるハーブ[2]。傷からの出血を抑える止血作用のあるハーブとして活用されていたと伝えられていますが、抗菌作用や防腐作用によって傷の悪化を防いだ・創傷治癒促進効果に優れたいたという説もあります。

成分的に見ても、ヤロウはインクのような青色の元“アズレン誘導体(カマズレン)”を含む精油として注目されている存在。アズレン誘導体はカモミール・ジャーマンの代表成分でもあり、抗アレルギー・抗ヒスタミン・抗炎症・鎮掻痒・皮膚組織再生促進作用などを持つ可能性が報告されています。ヤロウの抽出物でも抗炎症作用と収斂作用が確認されており[6]、虫刺されの痒み緩和をはじめ、アトピー性皮膚炎などのアレルギー軽減、火傷跡のケアなどに利用されています。

ただし、ヤロウの精にはセスキテルペンラクトンが含まれており、アレルギー性接触皮膚炎を起こす可能性も指摘されています。いきなり炎症を起こしていたり弱っている皮膚に使うことは避け、皮膚の厚い部分からパッチテストを行ってください。傷のケアに良いという説もありますが、悪化の危険性があり、有効性も認められていませんので、医薬品類の使用をお勧めします。

スキンケア用としても

ヤロウの精油は抗酸化作用があり、抗炎症作用や収れん作用が期待できる精油として、スキンケアにも活用されています。毛穴の開きや肌のたるみが気になる方、脂性肌の方やニキビが出来やすい方のケアに適しているでしょう。また、ヤロウ精油はチロシナーゼ活性を低下させメラニンの生成を抑制する可能性が報じられた[3]ことから、抗酸化作用と合わせてアンチエイジング(老化予防)や美肌サポートにも期待されています。

ヤロウ精油が利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレスを感じる時に
  • イライラ・怒りっぽい
  • 気分が落ち込んでいる
  • リラックスしたい時に
  • 寝つきが悪い時のサポートに

【肉体面】

  • 風邪・呼吸器系の不調に
  • 月経不順・生理痛緩和に
  • PMS・更年期障害の不調緩和に
  • 火傷痕やニキビ跡のケアに
  • 健康できれいな肌のサポートに

ヤロウの利用と注意点について

相性の良い香り

ハーバル感の中にスパイシー感もあり濃厚な印象のヤロウ精油。失敗無くブレンドしやすいのは柑橘系で、レモンなどライトなものを組み合わせることでヤロウの濃厚さも軽減されますよ。そのほかハーブ系・ウッディー系・スパイス系の香りも比較的ブレンドしやすいはず…ですが、濃すぎると重苦しい印象になるので少量ずつブレンドするのがおすすめです。

ヤロウのブレンド例

ヤロウ精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • キク科・ブタクサアレルギーがある人は使用を避けてください。
  • 敏感肌の方は肌を刺激することがありますので注意して使用してください。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元