【アロマ】カモミール・ジャーマン精油精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】カモミール・ジャーマン精油精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

スキンケアに用いられる青い精油

別名ブルーカモミールとも呼ばれるカモミールジャーマンは、アズレン誘導体(カマズレン)による濃い青色が特徴的な精油です。芳香の親しみやすさ・カモミールティーのような香りという点ではローマンよりす劣りますが、抗炎症・抗アレルギー・皮膚組織再生促進作用などの働きを持つ可能性があるカマズレンやビサボロールという成分を含んでいます。皮膚トラブルや痛みケアに注目されている精油です。

カモミール・ジャーマンのアロマ解説

カモミール・ジャーマン精油とは

カモミールの特徴・歴史

ふんわりと柔らかい香りが楽しめるカモミールティーや、入浴剤・芳香剤などの“香り”としてもお馴染みのカモミール。日本では「カミツレ(加密列)」という和名でも親しまれている存在で、自然療法や民間療法に興味のない方にも認知度は高いハーブの一つと言えるでしょう。お庭に植えられる植物として、もしくは“カモミールの香り”というルームフレグランスなどの芳香商品や化粧品類など、色々なところで名前は見かけますよね。

日本でも広くカモミールが使われている理由として、青リンゴに例えられる爽やかでフルーティーな香りが親しみやすいということが挙げられるでしょう。カモミール(Chamomile)という呼び名も、語源は地面を意味する“chamai(カマイ)”と、りんごを意味する“mēlon”を組み合わせたchamaimēlonとされています[1]。由来は香りがリンゴの果実に似ている植物だからですね。ちなみに、和名の「カミツレ」もオランダから西洋の薬草として伝わった“カーミレ(kamille)”が転じたもの。古い時代まで辿れば、語源は一緒ですね。

日本に西洋の薬草として伝わったとされるカモミール。ヨーロッパで古くから薬用植物として親しまれてきた植物であり、「人類に知られている最も古い薬草の1つ」とも称されています。少なくとも5000年以上の間、人類は薬として使用してきたことが分かっています[2]。古代エジプトや古代ギリシアでも使われていたようですよ。

ジャーマンカモミールとローマンカモミールの違い

ところで、一口に「カモミール」と言っても、その植物にはいくつかの種類があります。そのうち、ハーブや精油原料として主に用いられている「カモミール」は

  • カモミール・ローマン:Chamaemelum nobile
  • カモミール・ジャーマン:Matricaria chamomilla

の2つが主。学名(属名)が異なるように、この2つは植物分類でみると近縁種というには少し遠い存在。なのですが、ローマンカモミールとジャーマンカモミールは姿形や香り・用途が似ており、古くヨーロッパではどちらも同じように使われてきた歴史があります。

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ハーブ・香料原料として見た場合、ローマンカモミールとジャーマンカモミールは加工法によって香りの印象が異なります。精油・芳香原料としてみた場合、ローマンカモミールのほうが甘くフルーティーで「青リンゴ」という表現がピッタリの香り。逆に乾燥させてカモミールティーにすると、ローマンカモミールには少し渋みがあります。ジャーマンカモミールの方が渋みが少なく柔らかい風味になるのです。イギリスの童話『ピーターラビット』でピーターが興奮疲れしたりお腹を壊した時にお母さんが淹れてくれるのも、カモミール・ジャーマンで作ったお茶だという見解が多いようです。

お茶として飲むのには柔らかい風味を楽しめるジャーマンカモミールですが、蒸留して精油にした場合はカモミールティーの茶葉(ドライハーブ)を濃縮したようなハーバルな香りがします。カモミールと聞いて連想する「青リンゴ」やフルーティー感は弱く、少し薬草臭さがあるため好みは分かれるでしょう。精油でカモミールと聞いて連想する柔らかい香りを楽しみたいならば、カモミールローマンに軍配が上がりますね。香りだけではなく作用も穏やかで、リラックスしたいときのサポートにローマンカモミールが使用されることが多いです。

⇒カモミールローマンはこちら

カモミール・ジャーマンの特徴は?

精油の場合、カモミールジャーマンは「カモミール・ブルー」や「アズレンブルー」と呼ばれるインクのような濃い青色をしていることが最大の特徴です。青色の元となっているアズレン誘導体(カマズレン)には抗炎症作用やと抗アレルギー作用を持つ可能性が報告されており、抽出物は軟膏などの成分としても使用されています。このためカモミールジャーマンの精油も皮膚疾患やアレルギーケアに期待され、スキンケアや手作りコスメ用として注目されています。

カマズレンやカモミールジャーマンの作用については学術的研究数が少なく信憑性が低いという指摘もありますが、伝統的に使用されてきたこともあって世界的に使用されている精油でもあります。ただし、抗アレルギー作用を持つという説がある一方で、アレルゲンとなる危険性も指摘されています。初めて購入する場合は信頼できるお店でパッチテスト用に少量から購入することをお勧めします。香りは原液だとキツイですが、希釈すればそこまで苦にならないという方も多いですよ。

香料原料データ

通称
カモミール・ジャーマン(German Chamomile)
別名
ジャーマンカモマイル、カミツレ(加密列)、ブルー・カモミール(blue chamomile)、ワイルド・カモミール(wild chamomile)
学名
Matricaria chamomilla
(syn.Matricaria recutita / Chamomilla recutita)
科名/種類
キク科シカギク属/一年草
主産地
ドイツ、フランス、エジプト、ハンガリー、モロッコ
抽出部位
抽出方法
水蒸気蒸留法
濃い青色(アズレンブルー)
粘性
中くらい
ノート
ミドルノート
香り度合い
中くらい
精油成分
ビサボロールオキサイド類(α-ビサボロールオキシドなど)、β-ファルネセン、アズレン誘導体(カマズレン)、ゲルマクレンD
おすすめ
スキンケア・ヘアケア・アロマバス・芳香浴・マッサージ

薬草の中にフルーツを混ぜたような、複雑で濃厚な香り

カモミール・ジャーマン精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

リラクスアロマとしてはローマンカモミールの方が使用される機会が多いですが、ジャーマンカモミールにも抗不安・抗うつ作用を持つ可能性が示唆されています。古くヨーロッパでは明確に区別されずに使用されていた時期もありますので、伝統に基づいたハーブ療法ではストレスケアや不安・気持ちの落ち込みのケアに使用されています[2]。鎮静作用を持つと考えられることから、イライラや興奮対策、睡眠時のサポートなどにも使用されています。

芳香吸引ではなく経口投与による実験ですが、二重盲検プラセボ対照試験ではジャーマンカモミール(Matricaria recutita)を投与された被験者にハミルトンうつ病評価尺度に有意な改善が見られたという報告もなされています[4]。この報告の中でもカモミールの作用メカニズムは断定されていないこと、アピゲニンなどのフラボノイドの働きが関係している可能性が示されています。伝統療法的な効能はありますが、ジャーマンカモミールの香りを嗅ぐだけで、どの程度の抗不安・リラックス効果を得られるかは未知数といったところです。

また、ジャーマンカモミールの精油は独特のクセがあり、好き嫌いが分かれる存在。好きな香りではないという方がリラックス効果や睡眠のサポートを期待して無理やり香らせた場合は、それが逆にストレスとなり不快感を増加させてしましてみても良いですが、苦手な方の場合はカモミールローマンもしくはラベンダーなど別の精油を使用した方が無難でしょう。

肉体面への作用と効果

カモミールは伝統的に胃もたれ・むかつき、鼓腸、胃炎などの消化器トラブルに使用されてきました[2]。成分的に見ても、ジャーマンカモミール精油の主成分と言えるビサボロールオキサイドAには抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗痙攣作用、鎮痛作用など様々な働きが期待されています[5]。マウスを使った実験では“ドイツカモミールの揮発性成分と不揮発性成分の両方が顕著な抗炎症作用と抗アレルギー作用を持っていることを示した”[2]ことが発表されていることもあり、消化促進作用や粘膜を保護して胃壁を修復してくれる精油として胃腸の不快感軽減に用いられることもあります。消化が良くないと感じる時に香らせてみても良いかも知れませんね。

そのほかアロマテラピーでは通経作用を持つ精油にも数えられており、鎮静・鎮痛作用と合わせて月経周期の安定・生理痛の緩和に良いという説もあります。また、カモミールジャーマンは免疫力を高める可能性が示唆されていることから、風邪などの感染症予防や健康維持に役立つのではという見解もあります。だし、こうした効果を示唆している研究はカモミールティーや抽出物の投与が大半[1]。精油の香りを嗅いだり、アロママッサージに使用したりすることでの働きについてはエビデンスも少ないのが現状です。謳われている効能を過信せず、健康維持に役立つ可能性があるかもしれない、くらいに考えておきましょう。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

カモミールジャーマンが最も注目されている分野と言えるのが、スキンケアなどの皮膚利用。
独特なインクのような青色の元でもある、カモミールジャーマンの特徴成分「アズレン誘導体(カマズレン)」には抗炎症作用、抗アレルギー作用・抗ヒスタミン作用、創傷治癒・皮膚組織再生促進作用など様々な働きを持つ可能性が報告されています[2]。主成分と言えるビサボロールに抗炎症作用が示されており、2つの成分を含むカモミール・ジャーマンは炎症や痒みを抑えることに優れた精油として扱われています。

こうした働きからカモミールジャーマン精油は乾燥性敏感肌やアトピー性皮膚炎、湿疹などによる皮膚炎症・かゆみのケアに効果が期待されています。加えてカマズレンにもビサボロールにも皮膚組織の治癒・再生を促す働きが期待できるため、ニキビや虫刺されのケアに使用されることもあります。そのほかビサボロールは保湿・抗酸化作用を持つと可能性が示され[5]、紫外線対策やアンチエイジングなどより美容的なケア目的でも使用されます。

ただし、抗炎症・抗アレルギー作用が期待できるとは言っても、肌質や体質によっては刺激になり炎症を起こす原因になる可能性もあります。使用する前には必ずパッチテストを行ってください。特にアレルギーやアトピー性皮膚炎が重い方はごく少量を希釈して使うようにしましょう。小さいお子様用のスキンケアに用いる場合は、作用が穏やかなカモミールローマンの方が良いという見解もあります。

筋肉痛や関節炎にも

カモミールジャーマンは抗炎症作用が期待できるカマズレンやビサボロールオキサイドAを含むことが注目されている精油。加えて、アロマテラピーではカモミールジャーマンは鎮痛作用によって痛みを軽減することが得意な精油との評もあります[6]。このため神経痛、関節炎、リウマチ、筋肉痛、腰痛などの“痛み”緩和として、キャリアオイルで希釈してマッサージに使用されることもあります。

ジャーマンカモミールが利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・神経疲労
  • イライラ・興奮
  • 不安・気持ちの落ち込み
  • リラックスしたい時に
  • 前向きになりたい時に

【肉体面】

  • 消化器系の不調軽減に
  • 月経不順・生理痛緩和に
  • 関節痛や筋肉痛のケアに
  • 湿疹・皮膚のかゆみケアに
  • アトピー性皮膚炎のケアに
  • ニキビ・肌荒れのケアに
  • 肌を若々しく保つサポートに

カモミール・ジャーマン精油の利用と注意点について

相性の良い香り

少し青臭いような、濃厚とも芳醇とも言えるカモミールジャーマンの精油。多量に使うと濃さが前面に出ますが、ごく少量使用すれば“カモミールの香り”と言えるようなフルーティーさが前面に出てきます。独特の香りが苦手な方の場合はカモミール・ジャーマンを少量加える程度にしてみてください。柑橘系・フローラル系との相性が良いとされていますが、オリエンタル系やハーブ系ともブレンドしやすい印象です。

ジャーマンカモミールのブレンド例

ジャーマンカモミール精油の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方、小さいお子さんへの使用は避けましょう。
  • キク科植物(ブタクサなど)のアレルギーがある人は注意が必要です。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • 精油が衣服などに付いてしまうとシミになる可能性があります。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元