【アロマ】レモン精油
-植物の特徴・期待される効果効能とは?

【アロマ】レモン精油<br />-植物の特徴・期待される効果効能とは?

スッキリ感のサポートに

爽やかな香りと強烈な酸味が特徵の柑橘類、レモン。精油は果物よりもマイルドでクリアな印象の香りで、芳香成分の主成分はリモネン。欧米では古くから感染症に対して抗菌・消毒薬感覚で用いられてきた歴史があり、現在でも抗菌性の高さから風邪予防を兼ねたルームフレグランスやお掃除用の精油として活用されています。爽やかな香りは気持ちをリラックスさせてくれるほか、集中力ややる気を高める手助けをしてくれる可能性があることも注目されています。

レモンのアロマ解説

レモン(檸檬)とは

レモンの特徴・歴史

鮮やかな黄色と、酸っぱさまで連想してしまうような爽やかな香りが特徴的なレモン。芳香としてもオレンジと同じくらいに親しみのある存在ですし、食べ物や飲み物に爽やかさや酸味を加えてくれる食材としてもお馴染みの果物ですね。多くの方がイメージしやすいため鮮やかな黄色を“レモンイエロー(檸檬色)”、やや丸みのある紡錘形を“レモン形”と呼ぶなど、色や形を表すのにも用いられますね。

レモンもオレンジと同じくイタリアやカリフォルニアなどのイメージが強い果物ですが、原種はインド北西部あたりに自生していたシトロン(枸櫞)ではないかとの考えが有力視されています。古い時代にはレモンとシロトンの区別がハッキリと行われていなかったため明確ではありませんが、ヨーロッパやアフリカ北部にも紀元前、遅くても2世紀頃までには伝わっていた[1]ようです。古代エジプトでは肉や魚の腐敗防止・食中毒の解毒剤として用いられていたのではないか、古代ローマでは富のシンボルとして用いられていたという説もありますよ。

レモンという植物・果物が明確に区分された記述が見られるのは10世紀から。11世紀頃にアラブの方がスペインへとレモンを持ち込み、そこから地中海地域でレモンの栽培が本格的に行われます。加えて11世紀以降には十字軍遠征などによってレモンの調理法や果汁を飲む習慣もヨーロッパにもたらされました。レモンという呼び名の語源も、遡れば柑橘系の果実を意味する「laymun」もしくは「limun」というアラビア語です[1]。

とは言え、当時まだレモンは高級品で、一部の富裕層だけのものでした。中世の絵画にレモンがよく描かれているのも高級感・富の象徴という位置付けだったためですし、レモネードもまた高級品。17世紀にイタリアでレモン農園が作られ供給量が増えたことで、レモンは広く親しまれるフルーツとなっていきます。18世紀頃からレモンは壊血病予防に役立つ果物として、航海のお供としても親しまれました。ラム酒ベースのカクテル“グロッグ”にレモンジュースが使われているもの元々は壊血病予防を兼ねてだったと言われています。ライムジュースを飲んでいたイギリス水兵をLIMEY(ライム野郎)と呼んでいたアメリカ海軍も、このグロッグは採用したそう。

レモンは食材としてだけではなく、民間医薬のような形でインドやヨーロッパで使われていた歴史もあります。エッセンシャルオイル(精油)もまた消毒効果があると考えられ、マラリアやチフスなどの熱病・感染症予防に使用されました。化学者ルネ・モーリス・ガットフォセと共にアロマテラピーの基礎を築いたとされるフランスの医師ジャン・パルネ博士は、レモン精油の抗菌性の研究をきっかけに精油や芳香の薬理作用の研究を始めたとも伝えられています。ガットフォセのラベンダー同様に、アロマテラピーで大切に利用されているのも納得ですね。

Advertisement

現在でもレモン精油は一部の国で咳止め薬や湿布薬の成分として配合されていますし、もちろん食品香料としても多用されています。爽やかで清々しい空間を演出してくれることから芳香剤やバス用品、さっぱりとして好感度の高い香りから香水や化粧品類でも多く使われていますね。

レモン精油は安価な部類に属しますが、シトラールなどを添加した偽和も多いことが指摘されています。あまりにも安価なお品には注意した方が良いでしょう。ちなみに、和アロマと言うとユズが代表的ですが、国産レモンを使った完全国産の精油も販売されていますよ。水蒸気蒸留の商品もあり、最安値ラインからすると少しお高めにはなりますが安心感・使いやすさ共にトップクラス。安心感の高い精油にこだわりたい方は探してみて下さい。

香料原料データ

通称
レモン(Lemon)
別名
檸檬(れもん)
学名
Citrus limon
(syn.Citrus limonum)
科名/種類
ミカン科ミカン属/常緑低木
主産地
イタリア、アメリカ、スペイン、ブラジル、アルゼンチン、日本
抽出部位
果皮
抽出方法
圧搾法もしくは水蒸気蒸留法
※圧搾法の方が質・香りが高く精油として好まれ、水蒸気蒸留法は主に食品の香料用に用いられます。光毒性の問題があるので肌へ使用する場合は水蒸気蒸留法ものを選ぶと無難でしょう。
圧搾法:淡い黄緑色
水蒸気蒸留法:無色
粘性
低い
ノート
トップノート
香り度合い
中~やや強め
精油成分
d-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネン、α-ピネン、サビネン、シトラール、ベルガモテン
おすすめ
芳香浴・アロマバス・マッサージ・ヘアケア・ハウスキーピング・虫よけ

本物のレモンよりもクリアな、さっぱりした柑橘系の香り

レモン精油に期待される働き・効能

精神面への作用と効果

レモン精油の主成分は柑橘系精油でお馴染みのリモネン。それ以外にピネン類や、強いレモン様芳香を持つとされるシトラールなどが含まれています。余談ですが、この成分比率からレモン精油は私達が「レモン」と聞いて想像するよりもクリアでマイルドな香りになっており、レモン香の主成分とされるシトラール含有量の多いレモングラスなどの方がイメージする“レモン”に近い香りとなっています。

リモネンは鎮静・緩和作用によってリラックス効果が期待されている成分。レモン精油についても2018年『International Journal of Molecular Sciences』に掲載された系統的レビューでは、マウスを使った実験では5-HTおよびドーパミン(DA)の活動を調節することによって抗ストレス効果を示したという日本の論文も紹介されています。有効性が認められる段階ではありませんが、こうした研究からレモン精油は抗不安薬に類似する作用を持つ、ストレス対策に役立つ可能性があると注目されています。

勉強・仕事・人間関係などストレスや緊張が続いているときにレモン精油を香らせてみても良いかもしれませんね。ストレスや不安の軽減が期待できること、爽やかで明るい印象の香りを持つためか、アロマテラピーなどでは「明るい気持ちになるサポートをしてくれる」香りと称されることもあります。

活動時の香りとしても

爽やかな香りのあるレモン精油は、頭をスッキリさせることで眠気覚ましや体内時計が乱れている時などの“覚醒用”として取り入れられることも多い存在。リフレッシュや意識を冴えさせる働きを持つと考えられていますし、レモンの香りを漂わせた室内でタイピングを行うとミス発生率が半分近く低下する・デスクワーク時の「やる気」低下予防に効果があるなどの実験結果も報告されています[1]。このため集中力・記憶力を高めたい活動時の香りとして、勉強中や仕事中のルームフレグランス代わりに用いられることもありますよ。

肉体面への作用と効果

レモン精油の主成分であるリモネンは、消化吸収促進や胃粘膜保護など消化器系のサポートに対する有用性が示唆されている成分でもあります。レモンもまた古くから胃腸の働きを助けるために取り入れられてきた食材であり、精油も胃腸機能のサポートが得意ではないかと考えられています。香り自体もサッパリしていて気分が優れない時にも受け付けやすいこともあり、夏バテした時や脂っこい食事のあとの胸やけ・消化不良・吐き気などの消化器系トラブルの緩和に使われることがあります。

レモン精油の消化器系への有用性を示した研究論文も多く存在していますが、レモン精油やレモン抽出物の投与実験によるものが多くを占めています。ただし、2014年『Iranian Red Crescent Medical Journal』に発表された妊娠中の女性を対象とした実験では、レモン精油の芳香吸引が吐き気と嘔吐を減らすのに効果的である[3]ことが発表されています。香りに対する感じ方には個人差もあると思いますが、ペパーミントと共につわり・乗り物酔い対策として役立ってくれる可能性もありますね。

そのほかにレモン精油は体の保護・浄化効果を持つクレンザーオイルと紹介されることもあります。酸化ストレスを抑え血液・リンパ液の循環を促すことで、内臓負担の軽減や老廃物や毒素排出を促すという説もありますが、こうした働きの根拠となっているのもエッセンシャルオイルもしくはレモン抽出物の投与による研究論文。投与でも有効性が認められる段階には至っていませんし、芳香吸引やマッサージで使用した場合の有効性については更に分かっていません。過度な期待は避け、何らかの症状を感じている場合は医療機関で適切な処置を受けましょう。日本で精油の服用は認められていませんので避けて下さい。

口腔ケア・呼吸器の不調に

リモネンやピネン・テルピネンなどレモンに多く含まれている精油成分は、抗菌・抗ウィルス作用が期待されているものがほとんどです。このためヨーロッパでは抗菌・抗真菌性があることから天然由来成分としてレモン精油を使用しているマウスウォッシュ製品もあります。

また、レモン精油は抗炎症作用を持つ可能性も報告されています[4]。菌やウィルスから呼吸器粘膜を守り、リンパ節の腫れを軽減する働きがあるのではという説もあり、咳や喉の痛みを軽減するオイルとして呼吸器系の不調緩和に使用されることもあります。ただし、風邪やインフルエンザの予防や緩和に対して、レモン精油を拡散することでどの程度の効果があるのかは断定されていません。

とは言え、レモン精油はアロマテラピーなどの民間療法では風邪の初期症状ケア・喘息や気管支炎など呼吸器系トラブルケアに広く用いられている精油。ルームスプレーやルームフレグランスとして活用すると、抗菌作用などから風邪予防に役立つ可能性はあるかもしれません。

その他に期待される作用

肌への働きかけ

レモン精油には抗酸化物質・ビタミンCが含まれていること、抗菌作用を持つ成分が多いことから、ニキビケアに利用されています。収斂作用によって皮脂分泌を抑える働きも期待されていますので、脂性肌や頭皮ケアに用いられることもあります。加えて抗真菌特性が見られたことも報告されているため[5]、水虫やカンジダ症など皮膚真菌感染症の予防やケアにも効果が期待されています。

そのほか死んだ皮膚細胞を取り去って肌を整える・肌を柔らかくする働きがあるいう説もあり、肌のくすみ軽減やエイジングケア、ウオノメ・タコ・カカトの角質ケアなどに使用する方もいらっしゃいます。このあたりは根拠と言える研究等が多く存在しているわけではありませんので、使用してみる場合は自分のお肌の調子を確認しながら調整することをお勧めします。

ダイエットサポートにも

リモネンやγ-テルピネンなど血液・リンパ液の循環を助ける働きが期待できるため、レモン精油は下肢静脈瘤やセルライトの予防・解消マッサージに多く用いられています。レモン精油の芳香に脂肪分解促進作用を持つ可能性が報告されているためか、γ-テルピネンに脂肪分解作用が期待されているためか、痩身用オイルなどに配合されていることもあるようですよ。どれも有効性が認められているものではありませんが、ストレス軽減なども期待できますからセルフケアに取り入れてみても良さそうですね。

お部屋を清潔に保つお手伝いも

レモンには優れた抗菌特性、デオドラント効果があることからお部屋の空気を浄化して清々しい状態に保つことが出来ます。ナチュラルな消毒剤としてキッチンやバスルームなど水回りのお掃除に利用されることもありますし、お洗濯時に使用することで部屋干し臭・生乾き臭対策にも役立ちます。レモン精油はシルバー磨きの代用や木材の洗浄、シール剝がし、ネイルポリッシュリムーバー(除光液)としてなど、ライフハック系での活用幅がとても広い存在でもあります。

またシトラールには昆虫忌避作用があるとされることから、虫除けとしての効果も期待できます。風邪予防やお部屋のデオドラントにも嬉しい精油ですし、さっぱりとした香りがから、空気も重くなる梅雨~夏場にルームフレグランス感覚で香らせると気分のリフレッシュにもつながります。

レモン精油が利用されるシーンまとめ

【精神面】

  • ストレス・不安対策に
  • リフレッシュしたい
  • 頭をクリアにしたい
  • 集中力が欲しい時に
  • 元気になりたい時に

【肉体面】

  • 胸焼け・消化不良に
  • 吐き気の軽減に
  • 風邪予防・咳のケア
  • セルライトケアに
  • 脂性肌・ニキビケアに
  • 空気浄化・虫除けに

レモン精油の利用と注意点について

相性の良い香り

ほとんどの香りと相性がよくブレンドしやすい香りですが、特にフローラル系・柑橘系の香りとは相性が良いとされています。イランイランなど濃厚な香りをライトな印象にする時にも役立ちますよ。レモン精油は香りが飛びやすいですし、ビンに入っているものでも開封後は香りが抜けていってしまいます。多めに買ってしまった際にはブレンドにも活用して、早めに使い切るようにしましょう。

レモンのブレンド例

レモン精油の注意点

  • 妊娠中の方やお子さんには、低低濃度(0.1〜0.3%程度)希釈で使用してください。
  • 圧搾法で抽出されたオイルは光毒性があるため、肌につけた場合は日光(紫外線)を避けましょう。
  • 皮膚を刺激するので敏感肌の人は注意が必要です。希釈濃度に注意し、使用前にはパッチテストを行うようにしてください。
  • 疾患がある方・投薬治療中の方は医師に確認してから利用して下さい。
  • アロマテラピーは医療ではありません。効果や効能は心身の不調改善を保証するものではありませんのでご了承ください。
  • 当サイトに掲載している情報は各種検定とは一切関わりがありません。

参考元